ストレス発散 [本]

ま、要は「本を借りた」ってことなんですけどね。だいいち、ほんとにストレスを発散させるために本を借りてるのかどうかすら、判然としないんですが（そもそも、「ストレス」なんぞというものを溜めこんでるかどうか）。まあ、言ってみれば「業」というやつでしょうか。

• Mark Edmundson, Literature Against Philosophy, Cambridge
  何かの拍子に訳本の存在を知り、何とはなしにおもしろそうであるな、ということで、借りた。ただ、訳本副題にある「プラトンからデリダまでの哲学を敵として」というのはちょっとミスリーディングかな、という気がする。何となれば、エドマンドソンじしんのいとなみ＝文藝批評というものそのものが、その根底に「文学への嫌悪」を胚胎しているのであれば、たんじゅんにそれを「敵」と名指して邀撃すればいい、というものではないのだから。
  
  
• Juliana de Nooy, Derrida, Kristeva, and the Dividing Line, Routledge
  上のエドマンドソン本の並びにあったので、借りてみた。とはいえ、あまり「文藝批評」ラインの本ではなく、たんじゅんにこの本が「比較文学とカルチュラル・スタディーズ」叢書というのの1冊だから、文藝批評（のなかでもとくに「脱構築批評」と呼ばれることが多い領域）の並びに配架されていたのではないかと。ともあれ、クリステヴァはこのブログではあまり言及したことがないけど、学部生のころにこの本なんかはけっこう「韋編三絶」に近いほど読んでいたりするので（クリステヴァの書きものは、最初のうちは何を言ってるのかさっぱり分からずいやになってしまうが、ひとたび「掴んで」しまえばけっこうさくさくときもちよく読める）、この本を読むと旧友にばったり出くわしたときのような、どこかこっぱずかしくばつのわるい感じなぞが味わえるのではないかと。
  
  
• Mark C. Taylor, Erring, Univ. of Chicago
• Mark C. Taylor, The Moment of Complexity, Univ. of Chicago
  これらも、エドマンドソンの本と同様、何かの拍子に（思いだした！　デリダのこれの翻訳は出たのかどうかをチェックしてたんだ！）『ノッツ nOts』にぶちあたり、「ああ、そういえば『さまよう』もその昔よく読んだなあ」というなつかしさに駆られ、借りた（ちなみに『さまよう』の井筒訳は、いっけんものすごい悪訳に見えるが、なれてしまえばけっこういい訳だと思う）。と同時に、「マーク・テイラーのいちばん新しいのって何だろ？」ということもとうぜん気になり、もっとも刊行年月日の新しいThe Moment of Complexity も借りてきた、という次第。本家アマゾンのレヴューを見ると、この本を「ガチの複雑系本」だと思って読み、そして落胆した人たちが低い点数でレヴューを寄せているが、それはさすがに「気づかないほうがわるい」というものだろう。とはいえ、そういうことを度外視しても、一抹の不安を覚えさせる本ではある。
  
  
• Gareth Loy, Musimathics. Vol. 1, MIT
  メイン図書館からアパートに帰る道すがら、どうせだから理工学図書館にも寄ってくか！と色気を出し、そこの新刊コーナーで、「音楽の数理的基礎」という、ひじょうに魅力的な副題を持つこの本を発掘。で、この本の第1巻は、じつは日本に所有していて、どうせだったら持っていない第2巻のほうを、と思ったんだけど、ぱらぱらと立ち読みしたかぎり、サンプリングの定理（44.1kHzあれば「理論上」は可聴音域はすべてカヴァーされる、ってあれですね）とかフィルタリングの基礎とか、言うなればDSP(digital signal processing)がらみのことをその第2巻はおもに扱っており、だったらそこいらはそれなりに知ってることでもあるし、それに第1巻には「作曲技法の数理」とでも言えるひじょうに興味深い章もあるし、ということで、第1巻を借りてきました。

というわけで、さて、本業に戻るか。