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何でも最近、その名を語るのに「現代スコットランドを代表する」だの「現代スコットランド文学の奇才」だのという枕が付くことの多いアラスター・グレイの、処女作にして「最高傑作」と言われる『ラナーク』がやっとこさ翻訳出版されたというので(しかも、分厚さのわりに安い!)、元本を買ってみた。
手元に届いたばかりなので、当然まだ読んじゃいないわけだが、ぱらぱらとページをめくるだけで「いかにも」な感じががんがん伝わってくる。たとえば、物語がいきなり「第3部」から始まっている。また、たとえば、エピローグの紙面構成は、どうしたってこの本を思いだしてしまう(しかも、そこに挿入されるのは、「剽窃索引」と題された、この本の「ネタ元」ばらしである)。そして、豪速球で投げられる、つぎのようなメタフィクティヴな一節。
「きみが経験してきた、そして経験しつつあるすべてのものは、ただひとつのものから出来ている」
「原子から、だね」とラナークは応える。
「いや、ちがう。印刷物から、だ。たしかに、ある世界は原子から成る。だが、きみの世界は、整列した行のなかを、まるで昆虫の大群のように、白い紙葉のページからページへと行進するちびっこい印しから成っているんだ」
(しかもご丁寧にこの部分には註が付いていて、「印刷物も原子から出来ていることには変わりはないので、ここは『言葉』とか、そういう表現のほうがいいだろう」と、自らの書きものに難癖を付けている)
こうしたメタフィクティヴな要素は、下手をすれば読者を鼻白ませるだけの結果になってしまうのだが、ここまで大っぴらだと、「もっとやれ! もっとやれ!」となるからふしぎだ。
その分厚さや構成の入り組み具合から、『ユリシーズ』や『重力の虹』が引き合いに出されたりもするが、この『ラナーク』はそれらに比べかくだんに読みやすそうな感じがするので(本の分厚さ、構成の複雑さ、そしてリーダビリティを兼ね備えているという意味で、バースなんかがいちばん近いんではなかろうか)、冬期休暇中の「息抜き読書」で読み切ってしまいたいな。
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