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前回までに、ゲーデルの神の存在証明について、だいたいその4分の3程度を見てきた。証明の全体構成をいま一度確認しておくと、まず「神が存在することはありうる」こと、および「神が存在することがありうれば、その存在は必然的である」ことを示し、ゆえに「神は必然的に存在する」ことを示そうとするのだった。この稿では、証明の後半部分、つまり「神が存在することがありうれば、その存在は必然的である」ことを示し、証明を終わらせる。
まずは、それほど疑義がいだかれることがないであろう、つぎの定義を見てもらおう。
定義3
ある対象g の本質が必然的に具体化されうるのであれば、g は「必然的に存在する」という性質を持つ。
前回述べられた定義2によれば、「本質」とは「ある対象がもつすべての性質」と解釈できるのだから、それらすべての性質が必然的に具体化されるのだとすれば、それは「必然的に存在する」という性質を持つとしていいだろう(さらに、同じ定義2により、この性質そのものもg の本質であることに注意)。
つぎにつぎの公理を見よう。
公理5
「必然的に存在すること」はそれ自体、実在的性質である。
この公理も「実在的positive 」という言葉で言われていることを想起すれば、当然である。
さて、これらのことから、つぎの命題が証明される。
命題4
もし神が存在すれば、神は必然的に存在する。
この命題は、これまで述べてきたことからほとんど自明であろうが、いちおう証明を述べておこう。
証明
もしある対象、たとえばg が神であるとすると、それは定義1(「神とは、すべての実在的性質をもつ存在である」)によりすべての実在的性質を持つ。すべての実在的性質を持つということは当然、上の公理5で言われた「必然的に存在すること」という実在的性質も持つ。ゆえに、定義3によりg の本質は必然的に具体化される。ところで、g の本質とは、命題3(「g がもし神であれば、g の本質は「神であること」である」)により、「神であること」である。ゆえに、その「神である」という性質は、必然的に具体化されうる。証明終わり。
上の命題4が証明されたのだから、あとは「可能であること」と「現にそうであること」をつなげば、神の存在証明の後半、つまり「神が存在することがありうれば、それは必然的に存在する」が成り立つことになり、「神は必然的に、いかなる状況下でも、どう考えたって、存在する」ということが言えることになる。それを言うための最後の仕上げが、つぎの命題である。
命題5
使用する論理体系としてS5を仮定する(S5等、様相論理の初歩については、このエントリを参照。ここで言われることを理解するのに困らない程度の知識はそこで述べられている)。すると、神が存在することが可能であれば、それが存在することは必然的である。
ここでの最大の批判ポイントは、論理基底としてS5などという、いまだ業界内でも論争の絶えることのないものを持ち出すところにあるのだが、その検討は次稿に譲るとして、ここではその要求を飲みこみ、証明を見る。
証明
S5はKの保存的拡大なのだから、「P → Q が成り立てば、 ◇P → ◇Q も成り立つ」というKの様相分配公理が有効である。ゆえに、右の公理図式のP とQ にそれぞれ「神は存在する」、「神は必然的に存在する」を代入すると、P → Q は上で証明したばかりの命題4そのものであり、これは当然成り立つのだから、◇P → ◇Q である「神が存在することが可能であれば、神が必然的に存在することも可能である」も成り立つことになる。ところで、S5においては様相オペレータ簡略規則「**...□P → □P(*は□もしくは◇の任意の様相オペレータをあらわす)」が成り立っている。ゆえに、そのごくかんたんな場合として、◇□P → □P が成り立つ。これは、「口語」で言えば、「何かが必然的であることが可能なら、それは必然的である」ということである。このことから、前記言明「神が存在することが可能であれば、神が必然的に存在することも可能である」の後件は「神は必然的に存在する」となり、ゆえに、命題は証明された。
そして、つぎの定理が成立することになる。
定理
神は必然的に存在する。
これで、ゲーデルの神の存在証明、つまり、「神が存在することはありうる」ということ、そして、「神が存在することがありうれば、その存在は必然的である」ということがそれぞれ示され、最終的に「神の存在の必然性」が言われたことになる。
しかし、言うまでもないことだが、その議論図式自体の有効性をかりに認めても、そこで前提とされていることどもは、とてもではないがナイーヴに認められるようなものではない。さらに、認める認めない以前に、そこで使われている用語自体が、さらなる明確化を必要とするものだったりもする。
そして、これは個人的に上で言われたような「概念的疑義」よりも重要なことだと思うのだが、純論理的に見てこれは「穴」のない推論になっているのだろうか、とも思われる(S5を論理基底として採用することは、大負けに負けて「概念的疑義」に繰り入れることにしても、だ)。
次稿ではこのような疑義を、とくに論理的推論という観点から確認してみよう。
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