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前回まででその証明(のあたうかぎりの口語ヴァージョン)を概観したゲーデルの神の存在証明について、その証明の「概念的および方法論的(つまり、論理的)側面の批判的検討」をする前に、この稿は「番外編」と称して、このつづきものを書きつぎながら思ったよしなしことを開陳する。

まず思うことは、自分でも正直、ここまでねちっこく証明を追っかけることになるとはつゆも思っていなかったので、ややびっくり、ということだ(だいたい、タイトルに「(1)」だの何だの付くものが、最後までつつがなくたどりついたためしがない)。当初は、第1回目で紹介したフィッティングのTypes, Tableaus, and Gödel's God の紹介がてら、ついでにゲーデルの証明をかるく追っかけ、問題点を指摘して稿を結ぶ予定だった。それが、気がつけばもう5回も続けている。

その理由としてはもちろん、本業が忙しくてこういう「イージー」な、ほとんど機械的に筆がすすめられるトピックしか選択の余地がなかったということもでかいのだが(とはいえ、何だかんだ、前述のフィッティング本に載っている証明は、少なくとも1階述語論理ぐらいは知っている読者に向けて書かれているので、それをそのまま転載しても、失礼な物言いかもしれないがほとんどの人に理解不能であろうし、ゆえに、結局いくつかの証明はあたうかぎり初等的な方法のみを用いて最初から証明しなおしたりしていたのだから、最終的な工数としてはふつうのエントリを書くよりもかかっているかもしれない)、それ以上に、証明を書き下ろすことのきもちよさが、ここまでこの話題を引っぱってこられた大きな牽引力になっていたことは無視できない。

そして、そういう「きもちよさ」のなかで思ったことは、これにくらべていわゆる「人文的」な議論をするときの、もどかしさ、そして煮え切らなさはなんだろう、ということであった。それは、「数学は答えが一意に定まるが、それ以外、とくに国語などはそうではない」という、数学のできない文系志望の受験生が負け惜しみで口にするような通俗的見解とは、当たり前だが何の関係もない。そうではなく、いわゆる「人文系」と呼ばれる学問領域にあっては、それぞれが有する前提についても、そしてそこで用いられる方法についても、きわめていい加減、かつおのおのが手前勝手な設定をしており、ゆえに、かりそめの「正しさ」の基準も打ち立てられず、anything goesな状況が繰りひろげられている。そんなゲームが、おもしろいわけがない。

そういうわけで、概念的側面を云々するのは正直あまり気が進まないのだが、ともあれ、次回は方法論的側面と合わせて、ゲーデルの神の存在証明を批判検討する。



註 文体的配慮から、「と思われる」などの語句は省いてありますので、「これはちょっと言いすぎだろ」と思われる箇所がありましたら、各自「ことが多いように思われる」など、脳内で補ってください。

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