ヒルベルト＝ベルナイス『数学の基礎』 [趣味の数学]

かなりの以前から虎視眈々と「いつ買うかいつ買うか」とその機会をうかがっていたヒルベルト＝ベルナイス『数学の基礎』を、やっとこさフランス語版（全2巻。邦訳は抄訳しか存在せず）で手に入れた。

言うまでもなく、この書には、『ゲーデルと20世紀の論理学』第1巻編者序論で「ザ・数学基礎論」と呼ばれていたとおり、数学基礎論、いまではごくかんたんに「ロジック」と総称されている各領域の萌芽が、これでもか、というぐらいに詰まっている（ちなみに、かの名高きゲーデルの第2不完全性定理の完全な証明が書き下されたのは、この書が最初である）。

ただ、そんな重要な本にも関わらず、これまでに存在する完訳は、何とロシア語版とフランス語版しかない（日本語完訳がないのはともかく、英語完訳がないのはちょっとおどろき）。フランス語版序文によると、言語的な難易度の問題がでかいと書かれてはいるのだが、いまでもけっして意義を失っていない本だと思われるので、英語版完訳はぜひとも遂行させるべき、だと思うのだが。

ともあれ、このフランス語完訳版は、そういう「少数精鋭」っぷりをぞんぶんに発揮した見事なもので、ドイツ語原版とのページの対応づけ、ドイツ語第1版第2版の異同箇所の並列表記など、それなりに腰をすえてこの書と組み打ちしようと思っているものには、うれしい配慮が随所になされている。

というわけで、ドイツ語原版は、古書価の推移次第で購入を考えることとし、当面は図書館のものを借出して、フランス語版と相互参照させようと思っている。