なかなか実りの多かった買い本 [本]

購入数は少なかったけど、「少数精鋭」という感じで、一つひとつが与えてくれる満足度の高い書籍が買えました。

• J.A.S. Kelso and D.A. Engstøm, The Complementary Nature , MIT
  キャッチフレーズ的にまとめれば、「あれかこれか」から「あれもこれも」へ、つまり、「対立的思考」から「相補的思考」へ、という感じの本。そのことを、脳科学、認知神経科学などの知見をぶちこみながら、たのしく提示している、という風情です。「科学のうちに哲学を基礎づける」なんていう、人によっては「ムキー！」という反応を示しちゃいそうな章節もあったりして、じつに愉快。巻末に、「相補対辞典」のようなものが附録で付いており、これを眺めているだけでもたのしい。
  
  
• Paul Klee, The Thinking Eye , Wittenborn Art Books
  言わずと知れたDas bildnerische Denken の英訳。翻訳もあるにはあるけど、ながらく絶版状態が続いており、古書価も絶賛沸騰中であることも、よく知られたこと。で、内容については、せっかくなんで折にふれネタにしていくということで、いまは詳らかにしませんが（というより、説明不要、でしょう？）、あちらでも入手困難なのであろう、古書価は何と約23万！（本家アマゾンだとPBで約200ドル、とのことだけど、やはりそれほどお安くはない）こういう古典は、何語でであれ常時手に入りやすくしとくもんなんじゃないかなあ。
  
  
• 海野弘, 書斎の文化史, TBSブリタニカ
  『モダン・デザイン全史』などでおなじみの海野弘による書斎の文化史（あ、書名まんまだ）。図版満載で眺めてるだけでたのしい、ということもさることながら、「机に座る姿勢、ペンの持ち方、といった具体的な動きが、書斎の空間の中で大きな意味を持っており、歴史的に変化している」という、盲点と言えば盲点なことも跡づけられており、蒙を啓かれる。多木浩二の「椅子論」（！）である「身体の政治学」を含む『ものの詩学』もあわせ読むと、よりたのしいかもしれません。
  
  
• 伊藤博明（編）, 哲学の歴史4, 中央公論新社
  前巻が大好評のシリーズ「哲学の歴史」第2回配本は、これまた期待大なルネサンス編。中世に比べてもむしろ知られるところが少ないかもしれないルネサンス期の動向を手早く知るにはじつにいい本じゃないでしょうか。