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たしかに、ドゥルーズがらみの著作は、本人のものであれ、それに関連するものであれ、けっこう読んできはした。
ただ、その付き合い方を見ると、「ぞっこん惚れ込んで」というよりも、どこか斜に構えたものだったような気がする。言い換えればドゥルーズ(およびその関連書)を、我が身に引きよせて、というふうではなく、ただただたんじゅんに面白がって読んできた。
そうした不埒でいい加減なドゥルーズとの付き合いの一端を、ここに開陳。
- -, 銀星倶楽部ノイズ特集号, ペヨトル工房
のっけからいきなり関係ないじゃねえか、と言うなかれ。おれが「ドゥルーズ」という名前をはじめて知った、大事な本なのだから。それに、こういう経路でドゥルーズを知ったというところに、おれとドゥルーズとの関わり方のsingularitéがある……ような気もする。 - ジル・ドゥルーズ, 差異について, 青土社
はじめて読んだドゥルーズの本。都心からちょっと外れた私鉄駅前の本屋で買ったこと(この本もこの本も、その本屋で買ったんだっけ)、よく分からないながらもノートを取りながら生真面目に読んだことを、なつかしく思い出す。今では後述する『無人島』でも読める。 - ドゥルーズ=ガタリ, アンチ・オイディプス, 河出書房新社
この本を買った頃、持てる財力のほぼすべてをレコードの購入に充てていたので、誕生日だか何だかでもらった図書券(って、今はもうないんだよね)で購入。アールブリュ作家のロバート・ギーを、フランス風に「ロベール・ジー」と表記していたことで、この本の翻訳の質についてふかい疑念を抱き、フランス語の学習をはじめることをおれに決意させた。最近、新訳で文庫が出たので、今読むのなら、この新訳もあまり評判がよくないとはいえ、そっちの方がいいだろう。 - 浅田彰, 構造と力, 勁草書房
- 浅田彰, 逃走論, 筑摩書房
何かと毀誉褒貶相半ばすることの多い浅田彰だが、「ドゥルーズ=ガタリ」という対に関する手引きとしては、いまだこの2冊を越えるものはないだろう。とくに、後者に収められている今村仁司との対談は何度も読み返した。 - ジル・ドゥルーズ, 意味の論理学, 法政大学出版局
『アンチ・オイディプス』の読書体験で、こうした類いの翻訳というものに疑義を覚えていたので、いまだ学習途上であったフランス語よりはいけるだろう、ということで、英訳を読んだ。当時は、漠然とながらも分かった気がし、あまつさえ「へえ」と非常にためになった気もしたが、最近、これも文庫で新訳が出たので買って読みなおしてみたところ、あまりにも分からなかったので思わず笑ってしまった。 - ジル・ドゥルーズ, 差異と反復, 河出書房新社
大学入学とほぼ同時ぐらいに、無謀にも原著で読みはじめた。これは、上述の『意味の論理学』とは違い、当時の「分かり」と「得心」の感覚は今も残っており、かつ「分からない」という残余感もあるので、いまだ読みかえしている。以前、この書に関連してこんないい加減なエントリ(とはいえ、嘘は言っていないつもりだが)を書いたが、もうちょっと厳密にまともなことを書くべきだろう、と思っている。 - 丹生谷貴志, 死体は窓から投げ捨てよ, 河出書房新社
- 澤野雅樹, 死と自由, 青土社
『差異と反復』ラインのドゥルーズ読解に際して、しかつめらしい、いかにも「学術的」な装いを凝らしたものよりも、そこから少し外れたところからドゥルーズを読み解くこの2人から、おれは少なからぬ恩恵を受け取っている(ような気がする)。とりあえず、この2人の著作はどれも面白いのだが、丹生谷貴志に関しては3編の「ドゥルーズ追悼」文書が収められている『死体は窓から投げ捨てよ』を、澤野雅樹に関しては、一部でえらく評判の悪い、ドゥルーズの自死における「スポーティさ」を称揚した一文を収めてある『死と自由』を挙げておく。 - ミレイユ・ビュイダン, サハラ, 法政大学出版局
ドゥルーズのライプニッツ解釈は、『襞』で全面展開されており、それにふれた感触では、「頓痴気なこと言ってんなあ」という意味で「こりゃすごい」というものだったのだが、この書を読んで、もう少しまじめに捉えてもいいかな、という気になった。『差異と反復』以降のドゥルーズの思索を考える上で、外せない二次文献ではなかろうか。 - ジル・ドゥルーズ, 無人島, 河出書房新社
- ジル・ドゥルーズ, 狂人の二つの体制, 河出書房新社
色々の時期、色々の媒体に発表された文章やインタヴュを集めたもの。前者は1953年から1974年までを、後者は1975年から1995年までをカヴァーする(原書はいずれも1巻本だが、翻訳はどちらも2巻に分けてある)。どれもそれほど長いものではないし、扱われている話題も様々だから、ここからドゥルーズに入るというのもありかもしれない。「ベルクソンにおける差異の概念」(前出『差異について』と同じ)や「ドラマ化の方法」など、『差異と反復』読解に欠かすことのできないものも所収。 - アラン・バディウ, ドゥルーズ, 河出書房新社
ドゥルーズについて書かれた書物としては、クレ・マルタン『ドゥルーズ/変奏』、ズーラビクヴィリ『ドゥルーズ・ひとつの出来事の哲学』、ハート『ドゥルーズの哲学』などがあるが、これらPro Deleuzianなものとは違って、このバディウによるドゥルーズ論は、いわば「敵」による「敵」の書物である。ときに、反対者の評言は、仲間内のそれよりも精確で、鋭い。このバディウの書にも、そうした鋭さがある。
つわけで、他にももちろんドゥルーズの著作は読んでいるのだけど、それらについて書きはじめるとまた長くなるので、とりあえず今回は『差異と反復』ラインをめぐって、という感じで(ちなみに、『差異と反復』登攀指南としては、まずは「ベルクソンにおける差異の概念」や「ドラマ化の方法」、そして『ベルクソンの哲学』で慣らし運転ののち、ご本尊に突入しちまうのがいいのではないかと。分からないところも山ほど出てくるでしょうが、そういうのはその都度対応していけばいいのです)。
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こういう情報ほど私にとって大切になり得る可能性を持ったものはないです。当該書籍と時代拘束性の関係や読み手のポジション(例えば学生だったとか労働者だったとか)などによっても、その解釈は変りうるし、読み手の世代性、出自環境などとてつもない多くの独立変数を考えるとき、当該書籍の評価は変っていくが、こうした解釈上の偏りこそ私は読書の楽しみの一つだと思っているので、はやしさんの感想と私がいだくであろう感想がなぜこう違うのかというのも楽しみの一つだと思っている。時間が許す限り、はやしさんのドゥルーズリストを攻略してみたい。
当たり前のことですが、絶対唯一な不偏不党の立場など、ありそうにもありません。もちろん、「何に関してか」によって、その「不偏不党でなさ」具合も変わってはくるでしょうが、ことにこうした「人文・社会科学」と俗に呼びならわされることが多い領域に関しては、それらについて不偏不党でないことを謳うよりも、むしろ、自らの偏向具合をexplicitにすることがぜひとも必要に思われます。おれは、このエントリに限らず、本の紹介に関してはいつでも偏頗的であろうとしてきたし、そのことがまたひでさんの言う「楽しみ」、そして「面白さ」につながっていけば、と思っています。
いずれにせよ、ひでさん、そしてこのリストを参照してくださる人たちが、その人固有の楽しみ、そして面白さを、これら書籍群に見出さんことを。
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