届いた本 [本]

ここを定点観測している人のなかで、最近「買った本」とかいうエントリが少ないなあ、と思っている方もおられるかもしれない。

じっさい、最近それほど本を買っていないから、ゆえに「買った本」というエントリの上げようがない、という事情もなきにしもあらず、なのだけど、それよりも、買いはしたけど、わざわざここで紹介するには及ばない、という買い本生活を送っている、というのも、また事実。

そんななか今日は、ひさかたにアマゾンから本が届き、それらは、まあ紹介してもいいかな、というような本なので、買い本エントリをば。

• Barry Yourgrau, Nastybook , Joanna Colter
  この間それをネタにエントリも書いた『飛ぶ教室』で知り、おもしろそうだなあ、と思ったので購入。すでにして柴田元幸による翻訳も出ており、それを買ってもよかったんだけど、コストパフォーマンス的にこっちのほうが優れているし、それに、一話一話がごく短いので読むのにそんな苦労もしないだろうから、原書を選択。で、本の造り自体もそれこそ"nasty"で、ふつうに本を開くと天地が逆に製本されており、「おや？」と思った瞬間ごていねいに、表紙から見て正しい方向で「ねえ、この本さかさまじゃない？　それともきみがさかさまなのかな？」と書かれているのを発見する、という寸法になっている。のみならず、刊行年月日などの書誌データが書いてあるページ（和書だと一番最後あたりにあるもの）に、「この本の内容がヒドいからといってぼく（ユアグロー）をせめないで！　わるいのはこの本を出版した出版社の人たちなんです！　その人たちをせめて！」とぬけぬけと書いてあるのもたのしい。これらは、あざといと言えばあざといんだけど、「純なこころを持つものたち」は、こういうnastyさが大好きなのだ。
  
  
• Walter J. Ong, Ramus, Method and the Decay of Dialogue , Univ. of Chicago
  『声の文化と文字の文化』でおなじみのオングによるラムス論。と言ってももちろん、ラムスを単体で扱っている、というわけではなく、ラムス（の思想）を「古代・中世」と「近世・現代」をつなぐ「かなめ」として捉え、「古代・中世」的な「修辞学・記憶術」的な「知の技法」が、デカルトにおいて一挙に開花する「近世・現代」的な「理性」的「知の技法」をどれほど下支えしているか、ということを論じている。ホッケ『迷宮としての世界』（原書）、イェイツ『記憶術』、カラザース『記憶術と書物』（原書）なんかも併せて読み返したい（ホッケもカラザースも品切れか……カラザースはともかく、ホッケなんてのは「読んでないと恥ずかしい」というぐらいの古典中の古典なのに……）。ちなみに、こちらのページでここいらの結構がひじょうに手際よくまとめられています。
  
  
• Gareth Loy, Musimathics , MIT
  タイトルからも分かるように、数理音楽学の概説書。全2巻中のこの第1巻では（第2巻はもうすぐ刊行）、「音」というものの物理的・数学的・心理的成り立ちから説き起こし、音響学の簡単なサマリーを経て、作曲技法のごく簡単な数理的フォーマライゼーションで締め、という感じです。いまTopos of Music なんていう化け物本（1300ページもあって、しかも、上質紙を使っているのでめちゃくちゃ重い！）を読んでるからかもしれないけど、ごくごくelementaryな印象で、ちょっと物足りないかな、という気もしないでもないですが、必要最小限のことが簡潔にまとめてありそうなので、ここいらの様子を手軽に知るにはうってつけ、かもしれません。