買い本 [本]

外食をしたついでに、古本屋に行き買い本。古本屋というのはやはり、新刊書店では目に留まらぬ、というか、そもそも置いていないような本を掘り出せたりするので、面白い。

• 青木昌彦, スタンフォードと京都のあいだで, 筑摩書房
  「おお、こんな本を出していたのか！」と思わず声をあげそうになった1冊。いちおうエッセイ集、という体裁ではあるけど（帯にもそう書いてある）、いろいろと含蓄のあることが書いてありそうです（アマゾンのレヴューを見ると、何とはなしに「比較制度分析・実践編」という趣があるような感じ）。ちょうど、読書会で『比較制度分析に向けて』を読もうか、という話にもなっているところであり、いい巡り合わせ。
  
  
• 藤沢たかし, 63歳からのパリ大学留学, 新潮社
  上記の青木昌彦のエッセイと同じ棚で見つけた。おれ自身も、どうあがいても「若い」とは言えない年での留学であり、相当シンパシーを覚えるが、それにしても、60を超えてなお留学しようと思い立ち、なおかつそれを成就させてしまう精神力行動力はものすごい。
  
  
• リチャード・セネット, 無秩序の活用, 中央公論社
  セネットという人は全然知らないのだけど、帯文に「エリクソンの同一性理論とアナキズム思想を綜合した〈新アナキズム〉に出発点を求める新鋭による創意あふれる提言」とあり、うさんくさいながらも非常におもしろそう。ちなみに翻訳は、『数理社会学』を編纂していたり、前に紹介したことがある創文社の現代自由学芸叢書から『自己組織性』という本を出していたりする今田高俊による。それにしても、古書価がひどいことになってるな。
  
  
• ナガイ・ケイ他, 喧嘩屋マルクス, 富士書房
  まるっきり現代書館から出ている「フォービギナーズシリーズ」と同じような感じの1冊。その論争史を軸に、マルクスの考えたことを整理しなおす、という感じかな。それはともかく、「喧嘩屋」と言えばマルクスの相棒であるエンゲルスも相当なもので、とくに『反デューリング論』で読まれるデューリングに対する嫌みと舌鋒の鋭さは比類がなく、高校のとき愛読していたのを思い出した。
  
  
• アガタ・クリストフ, 悪童日記, 早川書房
• アガタ・クリストフ, ふたりの証拠, 早川書房
• アガタ・クリストフ, 第三の嘘, 早川書房
  大学に入ってすぐぐらいに『悪童日記』を原書で読み「おおっと、こりゃすげえ」と感嘆したにもかかわらず、それにつづく続編・続々編は読んでいなかったので、まとめ買い。
  
  
• 三浦俊彦, これは餡パンではない, 河出書房新社
  『論理学入門』や『可能世界の哲学』（どちらもよい本）などの論理学哲学系の書物のみならず、『サプリメント戦争』に代表されるような、扱いに困る「創作もの」も書く三浦俊彦による1冊。この本はもちろん後者のセリーに属す。以上。
  
  
• 横道萬里雄・他編, 謡曲集〈上〉, 岩波書店
• 横道萬里雄・他編, 謡曲集〈下〉, 岩波書店
  じっさいに能の舞台というのは観たことはないのだけど、能、およびその台本たる謡曲にはなぜだかみょうに惹かれるものがあり、岩波文庫の『謡曲選集』や、はては草書で書かれたような百選本も持っており、たまに頁を繰ったりしている。この岩波古典文学大系はさすがに補注などが詳しく、舞台構成や舞い手の装束に関する記述もしてあるので、「舞われるもの」としてイメージがしやすい。
  
  
• 久松潜一・他編, 歌論集・能樂論集, 岩波書店
  歌論書というのはけっこう好きで、あちら（アメリカ）に行くときも岩波文庫の『中世歌論集』を携行して行った（学部初年級のとき、ロシアフォーマリズムをからめて歌論についての発表を行なったこともある）。さて、能楽書としては岩波文庫の『風姿花伝』を持ってはいるはずなのだけど、たしか岩波文庫版『風姿花伝』は旧字を新字に直してあって、旧字で書かれたものは旧字で読むべきだ、という旧弊な考えをおれは持っているので、買い直し。歌論書の部に関しては、この本は俊頼髄脳が入っていないので、小学館の日本古典文学全集のやつのほうがいい。

ほんとうはあと数冊買ったのだけど、それはとりたてて紹介するような本でもないので、省略。