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長谷部さんが「カントの三批判書を読む」という続きもののエントリをいま書きついでいる。おれが三批判書を読んだのは、かなり遠い昔のことなので、長谷部さんの書きものについて何か意味のあることが言えるとは思えない。だが、その昔、とはいえ、三批判書は、というか、とくに純理はそれなりにちゃんと読んだものでもあるので(多分に「いたしかたなく」という側面が存在してはいたのだけど)、そのときおれはどのように読んでいたか、という思い出エントリを書く。たんなる「埋め草」として読み飛ばしていただければさいわい。
まず、基本テクスト。これは緑色の表紙でおなじみのKoch, Neff & Oetinger & Coヴァージョンを使っていた。理由はたんじゅんに「安かったから」というものだったけど、人によってはこれを「一番テキストクリティークがちゃんとしている」と評していたりする。ただ、純理はある程度「固まったテクスト」なので、STWでもレクラムでも、どれでも大差ない、と思う。
つぎに、翻訳書。これは、とりあえずガリマールからのを利用していた。理由は、たぶん大岡信だと思うのだが、彼が、「日本語で読んでもわけの分からなかった哲学書を仏訳で読んだら、染入るように入ってきた」と言っていたので、うぶな少年はそれを信じたわけです。もちろん、日本語訳も手元において随時参照はしていて、それには何の変哲もない岩波文庫版を使用していた。純理の日本語訳としては従来、天野訳がスタンダードと言われてきたけど(おれもじっさい学校の授業で、純理を読むなら天野訳にしろ、と言われたことがある)、何せ高いし(この間古本屋でこの天野訳の講談社学術文庫版を見かけたけど、揃いで1万をゆうに越える値が付いていた。岩波文庫から出ていた天野訳も、相場はそれくらいだろう)、だいたいどういう翻訳であれそれほど読みやすいものではないので、結果、どれで読んでも一緒じゃないか、と乱暴なことも思えたりする。だから結局は、各自が気に入ったエディションで読めばいいのではないか、といまは思う。
注釈書としては何と言っても、スミスのこれを挙げないわけにはいかない。基本的におれは「注釈書」というものが好きで、下手をすると原テキストよりも注釈書のほうを漫然と読んでしまったりするのだけど、このスミスの注釈書はそういう「原テキストを無視した漫読」に最適。もちろん、ふつうの意味で有用でもあるので、持っておいて損はない(全然知らなかったのだけど、翻訳が出ているようだ)。
注釈書、というよりも「解説本」と言ったほうがいいような本ももちろん手元に置いていた。定評ある岩崎武雄のやつも持ってはいるけど、ほとんど参照したことはない。それより、いわゆる「分析系」と呼ばれる人たちのカント本のほうをよく読んでいた。そのなかからケルナーの『カント』とDynamics of Reason を挙げる。前者は、純理に限らず広くスコープを三批判書に取り、たんなる「解説」というよりは、現代哲学とのコネクションを教えてくれる。後者を純理、もしくはカントの「解説書」として挙げるのは、ほんとうを言うと違うのだけれど、でも、カントが現代哲学、とくに科哲に及ぼしつづけている影響を知るには、とてもいい本だ。
という感じで、これらの書物を引っぱり出して、長谷部さんの書きものの推移を見守ろうか、と思っています。
ところで天野訳のことですが、これはヤフオクでそれなりに安い値段で出ているようです(ここでバラすと高騰したりして)。少なくとも万を越えるところまで値が競ることは、まずないようです。
翻訳に関しては「大して気にするほどのことじゃない」というのは僕も同意で、カントに関して日本では篠原訳は避けるが吉とされていますが、実際に読み比べて酷いと思ったことはないですね。それと多くの文献紹介、非常に参考になりました。
天野訳学術文庫版、このオークションのは安いですね。というか、店舗で売られているものが高すぎるのでしょうが。ちなみにおれは天野訳岩波文庫版を、エロ本の占有率が店内で一番高いような古本屋で掘り当てました。
篠田訳、たしかにけっこう難癖つけられていることが多いのですが、他のこの手の訳書と比べるとかなりいいほうだと思います。ほんと、ひどいのあったりしますからね。ともあれ、そういう「ひどい」ものであれ、本人が「これでいい」と思えれば、とりあえずはそれでいいんですが。
ところでこの記事とは関係なくて恐縮なのですが、左右にリンクを分ける更新をなさりましたよね?Webラジオのリンクだけ、何故か枠ぶち抜いちゃって表示されるので気になりました。それと、あまり使わないのでどうでもいいといえばいいのですが、BlogWalkerというRSSリーダーで試しにここを読み込もうとすると、エラーが出たりして読みこめません。RSSリーダーというもの自体、あまり使わないので他のツールでも同じなのかはよくわかりませんが、自分のところ等は一応きちんと動くので。
あと、RSSの件についてですが、これは完全にブログサーヴィス側の問題で、ぼくとしては(コントロールフリークの常として)発行されるRSS書式もコントロースしたいのですが、それも適わず(ほんとを言うと、むりやりどうにかはできるのですが、そこまですることはないか、とも思うので、とりあえず放置しています。が、気が向いたらやるかもしれません)、ゆえに、こちらとしてはいかんともしがたいです。ただ、RSS書式は規格化されたものなので、リーダ側の不具合、ということも考えられます。もしあれでしたら、ぼく以外のブロックブログユーザのRSS取得はどうか、ということを調べてみて、その上で挙動をご報告いただければ、ぼくが何とかできる範囲で何とかできるかも、ですが、まあ、そこまですることもないのではなかろうか、と思います。
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