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抽象的な夢をたまに見る。昨日見たのは付値函数の夢だった。べつに、夢のなかで付値函数についてしゃべっていたというわけではない。夢全体が、なんとなく、付値函数だった。
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ぼくはあまり夢を見ないわりに夢のなかで行きつけの本屋(もちろん、それらの本屋は現実には存在しない)が三件くらいあったりするので「病膏肓に入る」といった感じがする。
その呼称にまだ「帝国」の二文字が冠されていたころ、東京大学の学生はピカールで、京都大学の学生はグルサで解析の勉強をしていたという。そういう、解析を学ぶさいにピカールを選ぶかグルサを選ぶかという選択は、東京大学と京都大学というそれぞれの大学の数学教室の雰囲気を何となくではあれ表しているように思われる。(たとえば、森毅は、東大の学生だったにもかかわらず、おもにグルサを読み、そしてピカールの問題を解いていたというが、これはひじょうに示唆的なエピソードではないか)

ところで、日本において解析の教科書というと、まっさきに高木貞治の『解析概論』が思い浮かぶが、その『解析概論』について岡潔は「代数感覚がつよすぎる」という批判をなしたという。そうした岡の批判が妥当だとすれば(ぼくには妥当なように思える)、『解析概論』に見られる「代数感覚のつよさ」は、代数学者としての高木の特質が思わず出てしまった結果なのか、あるいは、解析を学ぶさいにピカールを選び取った東大数学教室の「風土」のようなものが作用していたのか、そういうことも気になる。

ともあれ、ピカール、そしてグルサの教科書が、東京大学、あるいは京都大学の数学教室の雰囲気の形成に何らかの影響を及ぼしたのか、あるいは、そうした教科書の選択をするような数学教室の風土が、高木の『解析概論』に何らかの影を落としているのか、そういうことはまったく斟酌せずとも、ピカールとグルサという、解析が解析として確立してまもなくの熱気あふれる時期に書かれた教科書と、そして日本を代表する解析の教科書である『解析概論』を比較対照しながら読むというのは、このうえない愉悦であるだろう。

いつか、ピカール、グルサ、そして高木の解析の教科書を、ゆっくり、時間をかけて、ていねいに読みくらべられる日が来たらなあ、と思っている。
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