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ちくま学芸文庫から『ブルバキ数学史』が出ているのを今日本屋で発見して、「おお」とのけぞった。この『数学史』に限らず、ブルバキとおれとは浅からぬ付合いがあるだけに、なかなかに感慨深い。
「ブルバキ」というのは、50歳定年制を布く数学者グループで、そのメンバにアンドレ・ヴェイユ(かのシモーヌのお兄さん)、ジャン・デュウドネ、アレクサンドル・グロタンディークといった、一癖も二癖もあるような連中が含まれる。その記述スタイルは「公理、命題、証明」というセリーがひたすら続き、例などの提示はほとんどないという「味気ない」をまさに具体化したようなもの。初学者にやさしくないことこの上ない(ブルバキもその『数学原論』第一巻で「初学者向けではない」と自ら宣言していたように記憶する)。ただ、その一貫性、簡潔さ、そして一般性は他の追随を許すものではなく、いきおいそこにある種の凛とした美しさを感じることになる。
おれもそういう美しさにやられた口で、学部生のころは明倫館で何十冊にもなる『原論』をちょぼちょぼ買い集めてはページを繰り、定理の証明を書き下したりして愉しんでいた。さらには、そういうふうに「一人で愉しんでいる」のみならず、ブルバキネタで卒論まで書こうとかなり真剣に思いもしたが、それは何が何ぼでもやりすぎだ、ということで見送った。ただ、今となってみれば全然オッケーだったような気もする(おれがいたところはバリバリ文科系にもかかわらず、少なくとも学生に関しては「数学アレルギー」を持っている人が少なく、友だちが集まっては数学の問題を出しっこして解いたりしたものだった)。
今日見かけた『数学史』は、各『原論』に載っていた「歴史的覚書」をコンパイルしたもので、単なる「歴史的事実の寄せ集め」というものではなく、「数学的概念の発展史」とも言うべきもので、序に「大学一年程度の数学知識で読める」とは書いてあるものの、ちゃんと読もうとするとかなり手ごわい。手ごわいがちゃんと読めば、ある数学的概念が、いつごろ萌芽として潜在的に発生し、それがいつごろ顕在化したのか、という生態がとてもよく分かり面白い。集合・論理や微積分など、高校で既習済みのところなんかは比較的読みやすいので、そういう分かりそうなところを拾い読みするだけでもパースペクティヴが拡がると思う。
つわけで、誰にでもオススメ、というわけではないけれども、何かの機会があったら手にとってパラパラめくってもいいんじゃないかな。ちなみに、ブルバキそのものについて書かれたものとして『ブルバキ―数学者たちの秘密結社』という本もあって、これも面白いです。
小生も筑摩書房の新刊広告を読んでいまして、「ブルバギ」を見つけたとき、懐かしい思いがいたしました。昔、小生が中学生のころですが、毎日中学生新聞で隔週ぐらいで日曜日に森毅さんの「若い仲間に」という若者向きのエッセイを書いてまして、なんか結構ええかげんなことかいてるんですけど、肩書きが数学者。数学者って、結構アバウトなもんや感心したわけです。当時の顔写真では黒い長髪を垂らして、カッコよかったですが、今では白髪の一刀斎で、ええ感じのおじいちゃんです。毎回欠かさず読んでまして、森毅と名のつく書物はできるだけ目を通していたものです。「数学のある風景」(たしか海鳴社から出てまして、高校生のあっしにはいまいちピンとこなかったのです。話はだ学生運動華やかなりしころの大学、数学業界の内輪話で、その内情が実感としてわかってきたのは大学に実際入って将来のことを考え始めたころでした。そのなかに確か「ブルバギ」というのが出てたんじゃないでしょうか。さっぱりわかりませんでしたが)「異説数学者列伝」(これは「!」数学的思考苦手の小生でも十分面白く、まあ数学より人間に興味があるほうなので。
ブルバギも森さんは翻訳してたと聞いてたので、確か東京書籍から出ていた確か「ブルバギ数学原論」を立ち読みしましたがどこか異星の言語で書かれているような、こりゃあかんわということで早々に断念。そういえば、森さんの同僚で岩波から出ていた小針覗宏さんの「確率・統計学入門」は、理解は不十分でしたけど、傑作でした。演習問題がユニークでしたわ。それと小針覗宏著「数学の七つの迷信」東京書籍の森毅さんの畏友、小針への追悼文も笑わせて、泣かせてくれました。森さんは、今では立派なアカデミシャンになった浅田彰ちゃん(ちゃんは古いか?3月に東京で京大の一般公開セミナーがあるので、「ナマ」彰ちゃんを見れるかもね)の師匠として有名?(かなり、古いか?)森さんの樟葉の一戸建てを紹介したのも彰ちゃんだって森さん自身で言うてるし、神戸のおいしい料理屋マップから音楽情報まで、なんでも起用にこなす紅顔の美少年だったって。浅田彰が数理経済を得意としていたのも納得。
ブルバギでちょっと思い出してしまいました。かなり古臭いぞ私は!ですね。バルタンさんなら良くご存知かも。
ジャックでした。
さて、やはり「ブルバキ」と言えば森さん、ですよね。本文では触れるのを忘れてしまいましたが、森さんは『現代数学とブルバキ』という出色のブルバキ本も執筆していますし。それ以外にも森さんの本は、解析のやつやら線型代数のやつやら位相のやつやら(位相本はこのたびめでたく、ちくま学芸文庫入りを果たしましたね)、他の数学書とは一味も二味も違った風味で、ぼくも若かりしころ堪能した覚えがあります。厳密であるはず(と思われている)数学書ですらこんな「エーカゲン」な感じが出せるなんて、この人やっぱり只者じゃないな、と思いました。
一方、小針さんの本は、読もう読もうと思いながら未だその願を果たせていないのですが、高校生向け(だっけかな?)の数学啓蒙書なんてのも面白そうだな、と思った覚えがありますので、これを機会にちっくら腰を入れて立ち読みしてみたい、と思います。
それで、「彰ちゃん」はやっぱり、あらゆる嫌味や含みなしに「出来のいい人なんだなあ」と素直に思います。森さん自身も、嘘かホントかよく分かりませんが、数学で分からないことがあると彰ちゃんに聞くとか聞かないとか。ただ、別段数理経済を専門にしていなくても、微積分・線型代数はどういう経済学をやるにしても必須なわけで、そこへ来てゲーム理論が専門(だったですよね、確か)だとすると、位相がらみのこともやってるわけで(ナッシュ均衡の存在定理の証明に角谷の不動点定理とか使いますからね)、そりゃまあ、普通一般の経済学部生よりも数学には強いかな、という感じでしょうか。
と、またしても勝手なお喋りを繰り広げてしまいました。
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