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フランスから本が届いたのでひさびさに買い本エントリをば。
Jean-Pierre Belna, Cantor (Les Belles Lettres, 2000)
Anne-Marie Décaillot, Cantor et la France (Édition Kimé, 2008)
Philippe Lauria, Cantor et le transfini (L'Harmattan, 2004)
博論でカントールの1872年論文についてふれる必要があるため、何か参考になるかな、と購入。このなかでは Belna のものがいちばん一般向け(とはいえ、数学にかんする記述もけっこうちゃんとしている)かつ包括的、Décaillot のものがいちばん(「限定的」に近い意味で)専門的、そして Lauria のものがいちばん哲学的と言えると思う。
ちなみに、Belna は La notion de nombre chez Dedekind, Cantor, Frege という本も出していて、これもとても読みやすいのでおすすめ。
François Revinc et Philippe de Rouilhan, Logique et fondements des mathématiques (Payot, 1992)
論理学および数学の基礎にかんするアンソロジーとしては、Heijenoort のものが有名だけれど、「論理学の代数的伝統にたいする目くばせが足りなさすぎる」という批判をしばしば聞く。Revinc と de Rouilhan によるこのアンソロジーは、ブール、パース、そしてシュレーダーといった代数的伝統につらなる人たちの書きものも収められており、Heijenoort 本を補完するものとしてよいと思う。(論理学の代数的伝統についてもっと知りたい人は、こちらを読むべし)
Jean C. Baudet, Histoire des mathématiques (Vuibert, 2014)
それなりに新しく出たもののようなので、とりあえず購入。もっか関心がある19世紀末の解析学の基礎の部分を読んでみたかぎりでは、ちょっと薄味かなと思わないでもないけど、ただ、何でもかんでも濃い記述をしていたらたちまちにページ数がふくれあがってしまうので、バランス的にはこんなもんかな、とも思う。
ちなみに、フランス語で書かれた数学史の本としては、有名なデュウドネ本(翻訳)そしてブルバキ本(翻訳)のほか、こちらがおすすめ。
Jean-Marc Drouin, Philosophie de l'insecte (Seuil, 2014)
一部で話題の昆虫の哲学本。ぱらぱらとめくってみたかぎり、固有に「哲学の本」というより、「昆虫と人文学の含蓄的からみ合いをめぐるエッセイ」という感じで、ゆえに気軽にすいすいと読めそう。ついこのあいだ翻訳が出た。(ところで、翻訳の惹句に「デリダの動物論にまで言い及ぶ」とあるけど、ほんとうに「言い及」んでいるだけなので、この点にかんしてはあまり期待しないほうがいいと思う)
Emmanuel Kant, Critique de la raison pure (Flammarion, 2006)
手に入りやすい純理の仏訳本というとガリマールからのものと PUF からのものがぱっと思いうかぶけど、前者は Barni による1869年の訳が底本、後者は Tremesaygues と Pacaud による訳が底本となっており、じつに100年以上も前の翻訳ということになる(もっとも、ガリマールからのものは、先験的分析論まで──つまり、純理の約半分──が1980年に純理がプレイヤッド入りするさいになされた新訳である)。そんななか、2006年にフラマリオンから文庫化されたこの訳本は、1997年の訳であり、きわめて新しい。
もちろん、訳が新しいからといってそれがすぐさま訳の精確さにつながるわけではないけれど(じじつ、ぼくが大学生のころ「精確な訳」としてすすめられた純理の日本語訳は天野貞祐のそれだったし、アメリカの大学院時代に受講したカント・ゼミではケンブリッジ版が「読みにくいけど精確」としてすすめられた)、少なくとも「読みやすさ」という点では期待できるように思われる。時間があれば、上述の旧訳とこの新訳を、独語原版を横において読みくらべてみたい。
Bernard Séve, L'instrument de musique (Seuil, 2013)
Thierry Hoquet, Cyborg philosophie (Seuil, 2011)
スーユ社からの L'ordre philosophique は機会あるごとに(というのはつまり、フランスに本を注文するごとに)ちょぼちょぼ買い集めており、今回はこれらを買った。
一冊目は、書名の通り「楽器の哲学」の本で、これはまだ序説も読んでいないのでどういう論が繰り広げられているか分からないのだけど、以下のような点についてどのようなことが語られているのか(あるいは、語られていないのか)が気になる。まず、ひとつには、コンピュータは楽器と見なされるのかどうか、見なされるとすれば、それと伝統的な楽器との差異に何らかの哲学的含意は見いだせるのか、ということ。ふたつには、たとえばブゾッティなどに顕著な「楽譜至上主義」とでも称すべき、そもそもじっさいに演奏されることをほとんど念頭に置いていないような「音楽」は、「楽器の哲学」という観点からどう見られるべきか、ということ。
二冊目は、これまた書名の通り「サイボーグ(の)哲学」の本で、カンギレム、そしてハラウェイの仕事を下敷きに、「自然/人工」「人間/非=人間」「正常/異常」などの二項対立図式を揚棄せんとするもの、と思われる(ちなみに、カンギレムの「器官=機械」論については、ハッキングの論文がよい概観をあたえてくれる)。特筆すべきは「サイボーグ哲学」と題された第二部で、各章がごく短い節から成り立っており、そしてそれぞれの節のあとに「枝分かれ」する節が示されていて、章節をじゅんじゅんに読むもよし、「枝分かれ」の指示にしたがってあっちゃこっちゃと読むもよし、あるいはきまぐれに目についたところを読むもよしと、三種類の読み方ができ、コルタサルの『石蹴り遊び』を想起させられる。巻末の「文献逍遥」と題された文献案内もおもしろい。
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