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息抜きにシュプリンガーのカタログを眺めていたので、そのなかから気になったものをメモ。
まずは、哲学っぽいものから。
- ヤーコプ・フォン・ユクスキュル:生物記号論と理論生物学のはざまでの環世界の発見
- ジルベール・シモンドンにおける認識論と政治哲学:個体化、技術、社会システム
- 21世紀におけるハイデガー
- ランニングの現象学と哲学:長距離走の多様な次元
つぎに、法哲学がらみで目についたもの。法フィクション論は、来栖さんの『法とフィクション』を読んで以来ずっとうっすらとした関心が継続しているので、たぶんのぞいてみると思います。あとの二冊は、まあ「ちょっと気になった」という程度(でも、法議論学のやつは図書館でのぞいてみると思う)。
情報科学関連ではつぎのものが気になりました。テッド・ネルソンは言うまでもなく「ハイパーテクスト」という考え(および言葉)の創案者で、その「ハイパーテクスト」という考えにもとづきティム・バーナーズ=リーなどによっていまのウェブが作られたというのもまた周知のことと思いますが、テッド・ネルソン自身はいまのウェブの姿にあまり満足していないらしく、「ハイパーテクスト」という言葉(と考え)を思いついた1960年代からのプロジェクト「ザナドゥ」はいまだに続行中で(昨年、これの "working deliverable" バージョンが公開されたときはほんとうに驚いた)、しかるに、「テッド・ネルソンのビジョンにインターネットの未来を見る」という、どこかのうさんくさいコンサル(あるいは物書き)が言いかねないようなフレーズもそれほど的外れなものではないでしょう。ともあれ、「ネットの未来」について考えるとき、この本はなかなかに示唆を与えてくれそうです。二冊目以降は狭義の「情報科学」からはちょっとずれますが、いずれもおもしろそう。とくに、『ビットからイットかイットからビットか?』は、「世界」というものの成り立ちの根源を探るという意味で、哲学的な問いも含んでいるように思われます。最後の本は……読んだほうがいいような人、たまにいますよね。
『ランニングの哲学』を紹介するさいにも言いましたが、「それそのものには興味はないけどそれをめぐるあれやこれや(とくに、それについての学術的探究の成果)には興味がある」というものがたしかにあって、今回シュプリンガーの2015年度のカタログをざっくり見るなかで、ふだんは1ミリも興味のない主題を扱った次の本が気になりました。ぼくはぜんぜん乾き目ではないし、「実践的」にはかなり相当どうでもいいトピックではあると思うんですが、読むとけっこうおもしろいと思うんですよね(まあ、それを言ったら、何だって「読めばおもしろい」んですが)。アイス・クリームだって、そりゃ日ごろ食べることもありますが、とくに好きってわけでもないし、ふだん生活するなかでそれが前景化されることもまれにもかかわらず、「アイス・クリームについての学術的探究の成果」(しかも、第7版!)としてそれが差し出されるととたんに読みたくなる。ふしぎなものです。
「医療哲学」とでも言えそうな次の本も興味深いです。DSM は、従来から各種批判にさらされてきたのですが、この本では、精神医療従事者にとっての欠くべからざる指針=バイブルとしてその重要性を認めつつも、DSM の「バベル」としての側面、つまり精神医療における混乱を象徴するものとしての側面に重きをおくといった感じですが、批判一辺倒にとどまらないバランスのとれた本になっていそうです。医学の分析哲学ハンドブックは、値段的に個人が所有するにはちょっと敷居が高いですが、こういう本こそ所有してそぞろにぱらぱらページを繰るのがたのしいと思われるので、悩ましいところ(いや、買わないですよ?)。
あと、数学がらみは、それだけで単独の記事を書くべき分量になってしまうので、ここでは「読み物」風なものを二冊だけ。ネーターはビッグ・ネイムなのでこれまでいくつか彼女を主題にした本はありますが、この本は "Zur Geschichte einer kulturellen Bewegung" とあるだけに、数学にとどまらないそれなりに広い視野のなかでネーターおよび彼女の仕事が扱われるのかな。フロイデンタールは、日本ではウィキペディアにエントリーがないことからも推察される通りあまり有名ではない感じですが、本職での代数トポロジーにおける業績以外にも、かなり哲学色のつよい数学教育論も有名で(『数学構造の教育的現象学』なんて本もある)、この本では彼のそういう数学教育論がまとめられてるのではないかな。なにより、タイトルがいいじゃないですか。
最後に、ロジック関係をさらっと。真理本はどうするか分かりませんが、ゲンツェン本とデデキント=フレーゲ本は買います。
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