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調べものをするなかでたまたまチョムスキーがジジェクについて語っているインタビューを見つけたので、何となく訳してみた。電話でのインタビューなのですごく聞き取りにくく、それがゆえの訳しもらしがあるとは思うけど、大勢に影響はない、と思う。(だって、チョムスキーの言ってることはせんじ詰めれば「ジジェクははったりだからどうでもいい」ってことだけだし。いや、「だったらわざわざ訳す必要ないじゃん」と言われるかもしれず、さらに、じっさいそうなんだけど、もう訳しちゃったんだからしようがない)
ヴィンス・エマニュエル:さて、以前のわれわれの会話のなかであなたは「権力システムに抗う、またはそれを変えるのに際して、理論に興味はないし、じっさいそれは役に立たない」と言っていましたが、最近のますますバラエティに富んできている左翼知識人のうちの一人スラヴォイ・ジジェクはそれとはまったく逆のアプローチを採っています。つまり、ジジェクは、デリダやラカンや、その他大勢の理論家たちを引きながら、世界資本主義や帝国イデオロギーについての批判を鮮明にしようとしている。ここでお聞きしたいのは、まず、なぜあなたは政治や経済や社会にかかわる理論について本をもっと書かないのか、ということ。もうひとつは、ジジェクの仕事についてのあなたの考え、つまり、ジジェクの仕事についてどの程度のことを知っているか、彼の本を読んだことがあるか、そういうジジェクの仕事とあなたのかかわりについてお聞きしたい。そして、ジジェクが依拠するラカンの仕事や、デリダの脱構築やデリダがもたらしたものについてあなたがどう思われているかについてもお聞きしたいのです。

ノーム・チョムスキー:あなたはいま「理論」と言われましたが、私が「理論には興味がない」と言うとき、そこで意味されているのは「私は、はったりには興味がない」ということなのです。つまり、耳目をおどろかすような派手な用語を使ったり、ほんとうは理論なんてありはしないのにあたかもあるかのようにふるまうとか、そういうことに興味はない。だから、たとえば科学であるとか、何であれまじめにやっている分野でなじみがあるような理論なんてのはジジェクの仕事のどこを探したってありはしないのです。こころみに、ジジェクのすべての仕事のなかから、結論の引き出せるような原則や、12歳の子どもに5分で説明できるレベルを超えるような経験的に例証可能な命題を見つけ出してごらんなさい。あるいは、けばけばしい言い回しを言い換えることができるかどうか。私にはできません。だから、そういうはったりには興味がないし、ジジェクはそういうはったりの顕著な例だと思います。で、ジャック・ラカンについてですが、彼とはじっさいに知己があったんですよ。彼のことは好きでしたし、ときおり会いもしていました。ただ、率直に言って、彼はまったくのペテン師だったと思いますね。ラカンがしていたことと言えば、テレビカメラの前でポーズを決めることだけ、ですよ。パリの知識人の多くがやっているようにね。それで、なぜこういうはったりが影響力を持つのか。私にはその理由がまったく分かりません。そこには影響力を持ってしかるべき要素はぜんぜんないわけですし。それで、色んな人がそういう「理論」の重要性について私に説明するのですが、やっぱり理解できませんね。まあ、そういう次第なので、ほんとうは理論なんてないのにあるふりをする空疎なはったりには興味はないわけです。

ヴィンス・エマニュエル:とはいえ、ジジェクの仕事は近年ますます人気が出てきたことからも知られる通り、多くの人たちはそれに興味を持っているわけです。たとえば、ぼくがジジェクの名前をはじめて耳にしたのは数年前だと思いますが、それ以来、色んな集会やデモでその名前を頻繁に聞くようになっています。ところで、つい最近あなたはヴィジャイ・プラシャドの企画でアンジェラ・デイヴィスと対談しましたよね。個人的には、そういう相異なる意見を持った人同士の対談というのをもっと聞きたいわけです。それこそ、あなたとジジェクの対談、とかですね。そういう影響力を増してきている左翼との、議論とはいかないかもしれませんが、少なくとも対話を持つというのは、社会変革の助けになるとは思いませんか?

ノーム・チョムスキー:「ジジェクの仕事はますます影響力を増してきている」とおっしゃいましたが、どうでしょうね。私は、影響力を増しているのはジジェクの仕事ではなく、そのはったりだと思いますけど。たとえば、ジジェクの「仕事」と言いますが、それがどんな仕事か言うことができますか? 私にはできません。ジジェクは、言うなれば、優れた役者なんですよ。彼はものごとを刺戟的に語ることはできるけど、さてその内容は?と言うと……私には彼の言うことにどんな内実も認めることはできませんね。だから、ジジェクと対談することにまったく興味はないですし、ジジェクのほうでも私と対談することなんて御免こうむりたいと思うことでしょう。
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いや面白かったですよ。
まさかチョムスキーがラカンと会っていたとは。
名無権兵衛 2015/01/19(Mon)07:19:35 編集
チョムスキーとラカンの交流についてもうちょっとくわしく知りたいところですよね。
はやし 2015/01/19(Mon)14:09:43 編集
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