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以前から気になっているコキアレラのFormal Ontology and Conceptual Realism をリサーチする過程でシュプリンガーのサイトを見ていたら、コキアレラ本とおなじPhilosophy/Ontology区分の新刊でLogic in Reality というのが出ているのを見つけた。
そして、そのLogic in Reality のレヴュー集を見ると、Doubt Truth to be Liar やIn Contradiction がすてきにおもしろいグレアム・プリーストが「ステファン・ルパスコ (Stéphane Lupasco)」なる名前を出しながら評をしており、他の人のレヴューも見てみると、ほとんど一様に「ルパスコ」の名が引かれている。そうなると、当初の目論みはどこへやら(そもそも、おれはコキアレラの本について調べているところだったのだ!)、その「ルパスコ」なる人のことが気になってしようがなくなってきて、ちょいと調べてみた。
すると、英語ではほとんど有用な情報がない(英語版Wikipediaは、項目はあるにはあるけど、内容的にはお粗末なかぎり、Stanford Encyclopedia of Philosophyでは、西田幾多郎の項で通りすがりにふれられるのみ、というありさま)。仕方がないので、ルパスコの活動の地であったフランス語版のWikipediaを見てみると、「まあ、最初の一歩としてはいいかな」という程度の記述はあった。
それによると、ルパスコは、旧来の「真偽」という二値ではなく、「現実化 Actualisation」と「潜在化 Potentialisation」(「潜勢化」という言葉を日本語の文脈で使うと、どうしてもアリストテレスが想起され、そして、ルパスコはそうしたアリストテレス的意味合いでよりも、たとえば物理などで言うpotential energyと言うときの意味合いを籠めているらしいので、ここではやや不自然ながら、「潜在化」という語を宛てる)という二値を採用し、さらに、当時勃興したばかりの量子力学の「状態の重ねあわせ」から想を得て、「排中律」(フランス語では"la loi du tiers exclus")ならぬ「含中 le tiers inclus」なる値も加え、排中律の成り立たない、つまり現代風に言えば矛盾許容論理を用いて「世界/認識/精神」を解明しようとした、とのことである。
さて、上の「現実化/潜在化」というペアリングによる理論構成ということで、誰かのことが思いうかばないだろうか? そう、言うまでもなく、この御仁を思いうかべざるをえない(しかもルパスコは、「情感性 Affectivité」という概念まで持ち出してくる!)。そして、このような理論装置を持ち出したモチヴェーションが、「二値論理体系では『熱い現実』をうまく拿捕できないから」というのだから、話が出来すぎている気すらしてくる(しかし、やはり「他人の空似」なのか、かの御仁の著書を引っくり返してみても、ルパスコの名は見いだせなかった)。
そういうわけで、いっちょフランスからルパスコの代表作っぽいLe Principe d'Antagonisme et la Logique de l'énergie でも取寄せて読んでみようかなあ、と思っている(のだが、ルパスコが「ラカンと同級生」だの、かのソーカルが『ソーシャル・テクスト』に投稿したパロディ論文に登場しているだのということを知ってしまうと、どうしたものか、とも思うのだった)。
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