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奥さんが仕事に出かけているあいだの午前から夕方にかけて、娘とふたりで過ごす。娘は、よほど眠くないかぎりいつでもごきげんなので、面倒を見るのはそれほどたいへんではないのだけど、ごきげんで接してくるだけにこちらも思わず相手をしてしまい、ほとんど仕事が手につかないのがたまにきず。ともあれ、今日は昼寝をたっぷりしてくれたので、それに乗じてこちらも昼寝をさせてもらう(そのあいだに論文を進めるという発想にはならない)。

今日はめっぽういい天気だったので、奥さんが仕事から帰ってきてから家族三人で散歩に出かける。いつも行っている公園を抜けて、チャイナ・タウンをひやかす。「東方市場」という、いかにもうさん臭げな雰囲気をふんぷんとかもしていたところにおそるおそる足を踏み入れてみると、期待を裏切らぬうさん臭さで、ほぼまちがいなく本家の許可を取っていないであろうドラえもんの人形やサンリオ・グッズが陳列されている店や、「宗教用具」という看板がかかげられた、商品の赤や橙の占有率の高さゆえ店内に不自然なほどやわらかな光がじゅうまんする店などが軒をつらねていた。

帰宅するとけっこういい時間だったので、とりあえず娘のごはん→風呂→寝かしつけのあと、大人も軽く夕食を摂る。調子がいまいちだったので、テレビで映画を見ながら、ウォルター・チャットン、ヘンリー・ハークレイ、そしてトマス・ブラッドウォーディンといった中世後期の哲学者/神学者/数学者たちの連続体/無限をめぐる言説のおさらいをする。とくに、ブラッドウォーディンは、モノグラフが刊行されていてしかるべき人物であると思われるのに、いまのところ彼についてのまとまった書きものはぼくの知るかぎりジョン・マードックの博論のみなので、菲才をかえりみずいつかはそういう仕事がしてみたものだ、などと妄想する。

中世後期の連続体/無限をめぐる言説をおさらいしながらテレビで見た映画は、まず『2001年宇宙の旅』。見るたびに、「これを公開当時、何の前情報もなく見た人たちはどう思ったのだろうか」と思う。できれば、ぼくもそういう「公開当時、何の前情報もなく見た人たち」の一人になりたかった。つぎに、『V・フォー・ヴェンデッタ』。剃髪されたナタリー・ポートマンを見るたびに、シネッド・オコナーを思いうかべてしまう。ともあれ、V の "Ideas are bulletproof" という言葉にいつも胸が熱くなり、何だかよく分からないけど「やったるぞ!」という気分にさせられる。さらに、『サイレント・ノイズ』もやっていたので見てしまう。B級映画にちがいはないのだろうけど、テレビでかかるとつい見てしまうので、きらいな映画ではないのだと思う。

そしていま、ダミアン・ライスの O を聴きながらこれを書いている。
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おかげで論文執筆はあまりはかがいっていませんが、"All work and no play makes Jack a dull boy" という言葉もあることですし、たまにはよしとしましょう。
ぼくは、中世哲学にかんして専門的なことはほとんど知らないので、以下でおすすめする本も、「専門的に見てしっかりしている/ためになる本」というより、「たんじゅんに読んでたのしかった本」となりますが、「中世哲学は気になるけど何から読んだらいいのか分からない」という人にとって、中世哲学の門をくぐるとっかかりになればさいわいです。
 The Collected Papers of Bertrand Russell, Volume 5: Toward Principia Mathematica, 1905–08
Bertrand Russell
(Routledge, 2014)
ページ数をかんがえると、この手の本としては相場値段なのかもしれませんが、一冊の本に出す金額としては、ちょっと高いですよねえ。まあ、すぐ読めるわけでもないので、値崩れするのを待ちましょう。
ぼくが籍をおいている大学の図書館は、教員/大学院生への貸出しにかんしては、冊数無制限、かつ期限も何回でも延長ができるのでじっしつ無期限に借りていられるという夢のような環境(ぼくがアメリカで行っていた大学の図書館もそうだったので、北米ではこれがたぶん一般的なのだと思う)なのだけど、借りている本に他の人から請求がくることがあり、その場合、請求がきた時点から二週間以内にその本を返さなければいけなくなる。そういうとき、「うわあまだ読んでないよ」と大あわてでその本を読まなくてはならず、やや困ったことではあるのだけど、と同時に、「この本を読もうという人が他にもいるのか」と、ちょっとたのしい気分にもなる。
前記事「わが(知的)半生(大学以降編~いわゆる「文系」と言われるものとのかかわりを中心として)」で「デリダは言ってることはよく分からないけど何かかっこいい章句をくりだすので好きだ」と書いたわけですが、ドゥルーズもぼくにとって「言ってることはよく分からないけど何かかっこいい章句をくりだす人」なので、そういう意味でもちろんドゥルーズも好きです。ただ、デリダにくらべるとドゥルーズはそれほど読みこんだ記憶がないんですね。それはおそらく、それぞれの書き手にある「ねばりけとしめりけ」とでも言えるようなものの多寡によると考えられ、そう思うと、文体的に惹かれてそれなりに読みこんだことのある作家というのは、ぬめっとしていてじとっとした文章を書く人が多い、ような気がします。
Twitter で「#本棚の10冊で自分を表現する」というのが流行っていたようなのでそれに乗じて「自分を表現する10冊」を選んでみようと思ったのですが」を書くにあたって、「わが(知的)半生」シリーズをあらためて見かえして、いわゆる「文系」的な書籍にほとんどふれていないことに気づきました。ゆえに、機を逸した感がまんてんですが、大学以降(じっしつほぼ大学時代)に読んだ「文系」的な本で、印象に残っているものをつれづれに書き記します。
澤野雅樹はゴダールの映画によく出てくる読書シーンについて、「本を読むなら画面の外でやってくれ。それとも、こういう読書シーンについて、『お、本に手がのびるぞ。ほら、本を手にとった! いやあ、やっぱりゴダールは読書シーンを撮るのがうまい。ぞくぞくする』と思う人間が存在するのだろうか」と否定的に言及していたのだけど、ぼくはじっさい「ゴダール、読書シーンを撮るのがうまいなあ」と感じいってしまうので、「人の感じ方はそれぞれなんだなあ」とごく当たり前のことをあらためて思った。

あと、ゴダールは喫煙シーンを撮るのもうまく、そういうシーンが出てくるととうぜんタバコが吸いたくなるので、前にも書いたように、ゴダールを上映する映画館は喫煙可にするべき。
はたと「表現するべき自分」などというものはないことに気づき、選べませんでした。

また、「自分を表現する」ということを、それが妥当かどうかはともかくとして、「現在の自分をかくあらしめた」と解釈しなおせば、そういう本はこれまで何度か紹介しているので、あらためて選ぶまでもない、とも言えそうです。

参考までに、「現在の自分をかくあらしめた本」についての記事を羅列しておきます。これら記事で紹介された本(プラス・アルファ)からさらに精選して、「100回ちかく通読した」と言えるようなものを10冊選ぶとすればといった感じでしょうか。(もっとも、これら10冊がぼくを表現しているかどうかはよく分かりませんが)
今日は、朝の7時すぎまで執筆。娘が起きたのと入れ替わりで床に就く。就寝読書は『〈出雲〉という思想』。「国学(より精確に言うと、復古神道)における〈出雲〉の位置づけ」というのがおおきなテーマで、読んでいると、本居宣長や平田篤胤はもとより、記紀が読みたくなってくる。

昼すぎ、娘によじのぼられ起床。できればもうすこし寝ていたかったけど、まあしかたない。起きて、コーヒーを飲んでひと息いれてから、近所に住んでいる教授の家で開かれる哲学科新入生歓迎パーティーを家族でひやかしに行く。ちいさい子どももいることだしちょっと顔を出して30分ぐらいで帰ってこようという心づもりだったのだけど、なんだかんだでパーティーがお開きになる時間までいてしまう。

帰宅すると娘のごはんの時間だったので、ごはん→風呂→寝かしつけの流れに雪崩れこむ。パーティーに行ったこともあり、娘は昼寝をしなかったので、すぐに寝る。そのあと、奥さんの「オクラ料理のレパートリーを増やしたい」という謎の野心でつくられたオクラのピーナツ詰め焼きと、パーティーからの帰りにスーパーで買ったスパイスド・フライド・ポテトとホット・チキンを当てに、DVDを見ながら二次会。

見たDVDは、シュワルツェネッガーと、『ニムズ・アイランド』『マイ・シスターズ・キーパー』の女の子が主演の「ゾンビ映画」(カッコでくくったわけは、「ゾンビが出てくる」という以外にほとんどゾンビ映画の要素がなく、主題としてはむしろ「不治の病にかかった人の話」と言ったほうがいいと思われもするので)、『マギー』。どうにも煮え切らない映画で、エンド・ロールが流れはじめた瞬間に思わず奥さんと顔を見合わす。

そういう次第で口直しに『ハウス・オブ・カーズ』を見る。おもしろいのだけど、色んな人が入れかわり立ちかわりするので、人の名前および顔を覚えるのがめっぽう苦手なぼくとしては、着いていくのがたいへん。劇中、見たことのある人がいて、調べてみると『キャビン』の主役の女の子。それ以外にも、(知名度的に)びみょうな映画にびみょうな役どころで出ている人(たとえば、『127時間』でジェイムズ・フランコの恋人役をやってた人とか)がけっこう出演していて、そういう点からもたのしめた。

で、いま、論文書きのあいまに、「そういや最近ブログ書いてないなあ」と思い、これを書いています。
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