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「論文が書けない哲学者が近所の森で出会ったのは……?」という惹句の映画『森のカフェ』が近日公開されるらしいのですが、映画そのものというより、果たして論文は書かれるのかがちょう気になりますね。
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クノーに『文体練習』という本がある。何てことはない、取るに足らない、些細なエピソードを99の文体で書き分けたという、へんてこりんで、とてもおもしろい本だ。

この『文体練習』は、たんじゅんに「読む」という点から言えば、「へんてこりんで、かつ(あるいは、それがゆえに)、おもしろい」とたのしめばいいのだけど、「書く」ということを日常的になしているものには、ちょっと身につまされるところがある。つまり、99通りとまではいかずとも、何かちょっとしたことを書くさいにああでもないこうでもないと文体や構成に腐心することが常だからで、そういう身としては、「書くことの苦しみ」を否が応でも想起させられる本であるからだ。

ぼくなぞは、こんな誰が読んでいるとも知れぬ(あるいは、誰も読んでいないかもしれない)ブログの記事を書くときですら、文末は「です」「ます」にするか、あるいは「である」「だ」にするか、ここの助詞は「が」にするか、あるいは「は」にするか、そんなことに頭を悩ませ、しまいには、書くことの内容、そしてそのおおまかな構成まで決まっているのに、如上のような文体的細部が決まらず、記事そのものをお蔵入りにすることもよくある。

いつの日か、「文体」なんぞというものからは解放され、「書こうと思ったことを書く、それだけでよい」という境地に至りたいものだと思う。
昨日に引きつづき、中世ラテン語の文献を読みながら出会った文言をめぐっての脱線記。
中世ラテン語で書かれた文献を読んでいると、「心に火が燃えるように sicud ignis materialis agit in animam」という文章に出くわした。"Ignis materialis"(字義どおりには、「木を燃やした火」)という言い回しが気になったので調べてみると、中世の怪談で「夜、火に出くわしても、おそれるな。ただ、火を通りすぎたあと、それを振りかえってはならない」というふうにこの "ignis materialis" が出てくることが分かった。

さらに、この「火=霊」という捉え方はデンマークにもあり、何か超常的なことに出くわしたとき、その超常的なことが災禍をまねかないよう、家のなかに入る前に玄関口から家のなかをのぞき見て、「(火を燃やしてそこから発せられる)光に見られる前に、こちらが先に光を見なければならない Man skal se lyset, för det ser en」と、印象的かつ不気味なことが言われていたらしい。

思えば、日本でも、「鬼火」「狐火」というかたちで、火は「人ならぬもの」と結びついている。これはたぶん、「火」というものが、目には見えるけれども手でさわれるような「もの」ではないという点で、「霊」と類似していると考えられたためだろう。こういう感じ方の、洋の東西を問わない相同性というのは、ちょっとおもしろい。

(ちなみに、冒頭「心」と訳した "anima" の原義は「風」なので(ゆえに、冒頭の文章は「風にゆれる火」というイメージも喚起する)、「心=見えない風」と「霊=見える火」という対照も感じられ、それもおもしろい)

先日、日本から届いた本。
ここカナダの公用語は英語とフランス語なので、テレビもとうぜんフランス語のチャンネルがふつうにいくつかあって、映画を見るのに合わせたチャンネルがそういうフランス語のチャンネルだったりすると、英語がフランス語に吹き替えられていて面食らうことがたまにある(しかも、しばらくはそれがフランス語に吹き替えられているということに気づかず、とはいえ何とも言えぬ違和感だけは感じつつ見つづけてしまったりするのだけど、それはそれでなかなかにオツなものだ)。

今日も、「何かおもしろそうな映画はやるかな」と番組チェックをしていると、フランス語のチャンネルで L'événement という映画がかかることを見出した。すぐに詳細情報を表示させることはせず、それがそもそもフランスの映画なのか、フランスの映画でないとすれば何という映画が L'événement とされているのか、考えてみることにした。

結果、「L'événement という映画はじっさい何という映画か」はみごと当てることができたのだけど、こういう遊びができたりもするので、フランス語のチャンネルをじっさいに見ることはあまりなくても、そういうチャンネルが存在するというだけで、ちょっといい。
「たしかにぼくは、起きている時間のなかで活字にふれている割合は人より多いかもしれないけど、それはあくまである種の『致し方なさ』によってしからしめられたことであり、端的に『本が好き』というのとはちょっとちがう」と書いたけど、それでも、ぼくにだって好きな本の一冊や二冊ぐらいはある。小さいときは、ディズニーのキャラクターがフィーチャーされた、おそらくは英語圏の幼稚園から小学校低学年にかけての人が英語や英語圏の習俗・文化を学ぶのにつかうのであろう、赤い表紙のやや大判の本が、好きだった。おそらく、ぼくの人生のなかで、本を補修しなければならないくらい読みこんだ本というと、この本だけということになるだろう。

その本は、細かいところまで気が配られており、何がかかれているのかじっさいのところはよく分からずとも、見ているだけでじつにたのしかった。そのなかでも好きだったのが、何が書かれているのか少しは分かることもあってか、クリスマスのページで、とくに、何か円筒形のものをめぐってたのしげなてんやわんやがくりひろげられている様子を見ては、クリスマスの心浮き立つ感じを味わっていた。(後年、その円筒形のものが「クリスマス・クラッカー」というものであることを知ったのだけど、北米で友人のクリスマス・ディナーに招かれたおり、このクリスマス・クラッカーが一人に一個づつ座席に配置されているのを見て、しずかな感動を覚えたのを覚えている)
うちの娘は本が好きだ。すくなくとも、そのように思われても仕方のない行動をとっている。そして、「本だったら何でもいい」というわけではなく、彼女なりの選好基準があるらしい。そのうえ、好きな本にはやりすたりもあるらしく、最近のお気に入りは『ドイツ語おもしろ翻訳教室』だ。

つい先日も、娘が『ドイツ語おもしろ翻訳教室』を開いて食い入るようにページを見つめていたので、奥さんに「どうしてこいつはこんなに本が好きなんだろうね」と言ったら、「何を言ってるんだこの人は」という顔をしながら「それって愚問じゃない?」と返された。

たしかにぼくは、起きている時間のなかで活字にふれている割合は人より多いかもしれないけど、それはあくまである種の「致し方なさ」によってしからしめられたことであり、端的に「本が好き」というのとはちょっとちがう──とは返さずあいまいに笑っておいた。
映画などでたまに、レビがトーラーを読むときにポインターのようなものをつかっているのを見かけることがあり、そのたびに「これってあるとちょっと便利そうだな」と思っていたのですが(ぼくは本などを読むとき、指で文字をなぞる癖があり、そして、このポインターがあれば、「指」をそれまで読んだところにおいたまま何か他のことができて、その何か他のことから戻ってきたときに「あれ、どこまで読んでたんだっけ」となることがなくなりそうなので)、いかんせんそれが何と呼ばれるものなのか分からない。べつに、ペンでも箸でも何でだって代用が効きそうなので、レビがトーラーを読むときにつかうそれにこだわることもないのですが、どうせだったらレビがトーラーを読むときにつかうそれがいい。というわけで、調べてみました。

レビがトーラーを読むときにつかうあれは、"yad" と呼ばれるそうで、バル・ミツバーやバト・ミツバーの記念に贈ったりすることも多いらしく、ゆえに、入手もそれほどむずかしくないようです(じじつ、日本のアマゾンからですら入手可能)。ただ、問題は、これをトーラー以外のものを読むときにつかって罰当たりにならないか、ということですね。
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