異国で異国語を話す [留学]

今日も朝目覚めると朝の7時。もう、どうしてしまったのだ、というぐらい健康的な生活。とりあえずシャワーを浴びてから、向かいの建物にある食堂でコーヒーを買い、寮の横にあるベンチで一服する。血中のニコチン濃度が一気に高まり、身体がふわっと浮かびだす。好きなときに好きなだけ煙草が吸えない、というのはやはりつらいけど、でも、こういう感覚を味わえるのはそれはそれで悪くない。

昨日までにほとんどなすべきことはなし、行くべきとこは行ってしまったような感じなので、二三の雑務をのぞけば、今日は何をしようか、と途方に暮れる。とはいえ、ずっと部屋にいてもしかたがない、というか、煙草が吸えないので、ShoenfieldのMathematical Logic を持って外に飛び出す。

取り立てたる目的もなくぶらぶらしていると、ふと喫煙衝動に襲われたので適当な吸い殻入れを見つけて煙草を吸う。と、見知らぬ外人が「バス行っちゃった？」とたずねてきた。バスが行ったかどうかも何も、ここがバス停だなんてこと自体知りもしねえよ、と思ったが、そんなことは噫にも出さず、いやまだじゃない？とか何とか、適当なことをぬかす。そうこうするうちに、おめえさんどっから来たの？という話になり、日本からだよ、と答えると、ちょっと日本語しゃべってみてよ、といきなり言われ、えーでもそんな突然しゃべれって言われてもしゃべることないよ、それにこんなとこで日本語しゃべるなんて変じゃん？と答えると、いや、おれ日本語って聞いたことないからその音の響きを聞いてみたいんだよ、ほら研究内容とかちょっと日本語で紹介してみてよ、と言うので仕方なく、プログラミング言語の意味論についてちょこっと日本語で話す。すると、何かこう、流れるような抑揚があっていいね、と言うので、えー英語のほうがよっぽどジェットコースターみたいな抑揚あるじゃん、と思いつつも、まあ日本語って膠着語だからね、とかいい加減なことを言うと、他に何語ができるの？と聞かれたので、えーとあとはフランス語を少々、と答えると、Je m'appelle ...（名前忘れた）とか言いだしたので、それからしばらくフランス語で会話をしながら、おれはアメリカくんだりまで来て何をやっているんだ。