永遠小僧さんとわたし [雑]

他人というのは面白い。

人は、それがいいとか悪いとかということ以前に、「わたし」として在ってしまい、そういう「わたし」を基準に、世の中や、そして他人を見る。他人は「わたし」と似たようなものだ、という予断。そして、その予断はほとんどの場合、「当然」といった感じに裏切られる。

永遠小僧さんにそれほど「わたし」を投影していた、とは言うまい。実際に会ったことがないとはいえ、それなりに長きに亙る期間、永遠小僧さんのブログは読んでいるわけだし、あまつさえ、ネット上でではあるけれども、けっこうな分量のやりとりをなしてさえもいる。ただ、そうしたネット上の諸々から受け取る印象からは、当たり前だが零れ落ちてしまうものが相当あり、その零れ落ちてしまうものにこそ、こちらの予断を裏切ってくれるものが存在する。

そういう、ネット上では窺い知れぬ、こちらの予断を裏切ってくれるものの筆頭は、やはり「身体表現」であり、永遠小僧さんの場合で言うと、「クネクネ」というよりも「カクカク」してるなあ、ということで、とくに、動作と動作の繋ぎ目がスムースではない。いかにも車に轢かれそうな感じ、と言えば分かってもらえるだろうか（何か栄養素が足りてないんじゃないか？という思いを起こさせる部分もあった、ということも付け加えておく。自分では「マグネシウムが足りていないんじゃないか」と言っていた。多分、根拠はないだろう）。

そして、そのような「カクカク」した身体表現というのは、永遠小僧さんの「内面」にも実は深く関わっており、永遠小僧さんは存外投げやりだということも知った。

お茶会のあと、永遠小僧さんは帰る電車もなかろう、ということでうちに泊まったのだが、永遠小僧さんも二日目になるといい加減「緊張」も「人見知り」も解けてきて「本領発揮」という感じであり、「ま、いいですけどね」という発言を何回もしていた。これは、永遠小僧さんの内面の「カクカク」で「投げやり」なところを象徴するものに他ならないであろう。

それ以外に頻出した「永遠小僧ヴォキャブラリー」としては、「あ、大丈夫です！　大丈夫です！」や「いや、そんなことないですよ」というものがあるが、言うまでもなく実際は全然「大丈夫」ではないし、そんなこと大有りなわけで、ここには彼の虚実をないまぜにした、言うなれば脱構築的な営みを見ることもあながち無理ではあるまい。

ただ、そうした「投げやり」で「脱構築的（＝素直ではない）」な中にも、一つだけパッション丸出しな領域があり、それは「おれは日記が書きたいんだよ！」ということであり、そうした言辞が彼の口からまろび出るたび、「じゃあ書きゃいいじゃん」と思い、かつ言いもしたわけだが、そうした「自らを裏切る」という挙措自体がすぐれてポストモダン的であり、あまつさえそうした「日記が書きたいのに『読書日記』しか書けない」ということをも、陰画的に、つまり「裏側」から、さらに言えば「非-在」としての「日記」というものを表している、ということを強弁するのを見るにつけ、「これはもう、手遅れかも知れんな」と嘆息すると同時に、「いけいけ！」という想いも抑えがたく、こうして永遠小僧さんとの過ごしたときは流れていったのであった。