からっぽの時間 [ライフハック]

禁煙をすすめる記事でよく「煙草を吸うというのは時間をむだにしているのにほかならず、ゆえに、煙草をやめるとそのぶんこれこれの時間をもっと有効に使うことができる」ということが言われる。それはそうなのかもしれないけど、ただ、ぼくにとってそういう「むだな時間」というのはぜひとも必要なものだ。

それなりの長時間それなりに集中してあることをしていると、脳が臨界点のようなものに達してしまい、効率がぐっと下がってしまう。そういうときには、むりにでも作業に句点を打って、しかるのち、あらたな気持ちでつぎの文章を書きはじめたほうがいい。そうした目的のために煙草というのは絶好の機会を提供してくれる。

とくに、ぼくがいま住んでいるところは家自体が禁煙なので、煙草を吸うためにはそのたびに外に出なければならない。だから、「煙草を吸いながら作業を続行」ということにもならず、煙草を吸うときはほんとうに煙草を吸うだけだ。つまり、煙草を吸っているときはからっぽの時間が流れることになる。

そして、冬の夜にはマイナス10度をよゆうで下回る酷寒のなか冴えわたる月や、夏の朝には高原のようなちょっと肌寒いさわやかさのなか響きわたる鳥のさえずりが、からっぽな時間を満たしていく。それは、とてもいいものだ。