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国書刊行会が創業40周年を記念して「各界著名人」が国書刊行会の書籍をひとり3冊づつ挙げている。「だれそれがこういう本を選んでいる」という観点はとりあえず捨象して(というのも、ぼくが知っている人にかぎって言えば、「まあ、この人はこれを挙げるだろうね」という書目を挙げていることが多く、ゆえに、そういう観点からこれら推薦図書を見てあまりおもしろくないだろうから)、「どういう書籍が、著者が、そしてシリーズが多く選ばれているか」という観点から、ぼくのよけいなおしゃべりをまじえつつ、これら推薦図書を眺めてみたい。
まずは、どういう書籍が選ばれているか。選者3人から選ばれている書籍は、次のとおり。
- バベルの図書館
- 日影丈吉全集
- 定本 久生十蘭全集
- セリーヌの作品
- カチアートを追跡して(ティム・オブライエン)
- 悪の誘惑(ジェイムズ・ホッグ)
- バルトルシャイティス著作集
- アベラシオン(バルトルシャイティス)
このうちぼくが読んだことのあるのは、たぶんバベルの図書館のうちのいくつかと、セリーヌの作品少々(セリーヌは、プレイヤッド版まで持っているのに、ちゃんと読んだことのあるのは『夜の果てへの旅』程度というお粗末さ)、そしてバルトルシャイティスぐらいで、日影丈吉と久生十蘭にかんしては「名前を聞いたことがある」程度、『カチアートを追跡して』と『悪の誘惑』にいたっては「そんな本あるんだ」レベル。
つぎに、選者4人から選ばれている書籍。
- 放浪者メルモス(チャールズ・マチューリン)
そして、選者5人から選ばれて栄えある1位を獲得したのはこれは、ぼくも「いいところにランクインするだろうなあ」とは思っていたけど、まさかいちばん選ばれるとまでは思わなかった。
ちなみに、これはぼくも刊行当初「あ、こんなの出たんだ。欲しいなあ」とは思えどけっきょく買わず、そのまま海外に引っ越してしまい、今にいたる。今度日本に帰ったら買おう。
つぎに、どういう著者が選ばれているか。
選者3人から選ばれているのは、上の書籍編で選者3人から選ばれている書籍(あるいは書籍群)の著者、つまり日影丈吉、久生十蘭、セリーヌ、ティム・オブライエン、そしてジェイムズ・ホッグの5人なのでとくにおもしろ味はなし。選者4人から選ばれているのは、書籍で選者4人から選ばれていた『放浪者メルモス』の著者チャールズ・マチューリンのほかは、ボルヘス。ボルヘスが4人からしか選ばれていないというのは何となく少ないような気もするけど、まあこんなものなのかな。
選者6人から選ばれたのは、その作品集成が5人から選ばれていた山尾悠子(作品集成を選んでいたのが5人なのに著者別で言うと6人から選ばれているのは、『ラピスラズリ』を選んでいる人がいたから)、そしてレム。レムは、その選ばれる作品にばらつきがあり、ゆえに書籍として3人以上に選ばれたものはないけど、著者別だとやはりそれなりにつよい(ちなみに、作品基準で言うと、『ソラリス』と『完全な真空』をふたりづつ、『高い城・文学エッセイ』と『虚数』をひとりづつが挙げている)。
そして、選者7人が選んだ著者別1位は、何とバルトルシャイティス。書籍別集計で上位に入った『アベラシオン』および「バルトルシャイティス著作集」に加え、『イシス探究』を松岡正剛が挙げている。
ぼくは、バルトルシャイティスで読んだことのあるのは平凡社ライブラリー版『幻想の中世』と、フラマリオン版『アベラシオン』(だったかな? それすら覚えていない)ぐらいで、読後の感想も「まあ、好きな人は好きなんだろうねえ」としか思わなかったのだけど、そういう「好きな人」があんがい多いんだなあ。
では、シリーズで言うと何が選ばれているか? まず、
- 世界幻想文学大系(マチューリン、ボルヘスがここに入っている。ちなみに、ボルヘスで選ばれているのは、「ボルヘス・コレクション」を除外すると、『創造者』、『夢の本』、そしてボルヘスの単著ではないけど『架空の町』をそれぞれひとりづつ、という感じ)
- 文学の冒険(レム、ティム・オブライエン、そしてソローキンなど)
- 「バルトルシャイティス著作集」
- 未来の文学(サミュエル・ディレイニーの『ダールグレン』を2人が挙げている。同じくこの叢書に入っているジーン・ウルフの『ケルベロス第五の首』はもうちょっと選ばれているかと思ったけど、ひとりにしか選ばれてなかった。あと、『ゴーレム 100』をひとりも選んでいないってのはちょっとびっくり)
- ドラキュラ叢書(こんな叢書があったんだ)
- ロシア・アヴァンギャルド(全巻欲しい)
というわけで、書籍別、著者別、そしてシリーズ別の集計を見ると、「予想通りの書籍/著者/シリーズが選ばれてるな」という面、あるいは「え、これを選ぶ人、あんまいないんだ」という面(とくに、「黄金の夜明け魔法大系」とか、ひとりも挙げている人がいなかった)、そして「え、こんな書籍/著者/シリーズ知らない!」という面があって、おもしろかったです(じつに頭のわるそうな感想)。
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