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トマス・クーンによって提唱された「パラダイム」という考えは、たとえば相対主義的傾向のつよい人たちが「科学の絶対性」(しかし、「科学の絶対性」なぞというものを主張している科学者は、それを批判するもののファンタジーのなか以外に存在するだろうか?)を「相対化=無化」するために持ち出されがちだが(「科学と言えども『科学外』の要因によってその思考様式が規定されており、そうした『科学外』の思考様式ががらっと様変わりすると、科学に『革命』とも言うべき変化がもたらされる。つまり、科学も『科学外の信念の体系』の函数となっており、ゆえにそれは絶対ではない」)、提唱者たる当のクーン自身が、この「パラダイム」という概念をのちに撤回していることは、あまり知られていないように思える(だから、あいかわらず「トマス・クーンの言うように」という枕をともなって、この「パラダイム」が引きあいに出されつづけている)。
なにゆえにクーンがこの「パラダイム」という考えを棄てたかについては、彼のThe Structure of Scientific Revolutions改訂版を見てもらうとして、ここではごくかんたんに、かつクーンの枠組み(パラダイム?)にとらわれず、そうした「パラダイムシフト」に依拠した「科学批判」が、いかに当てにならないかを見る。
まずだいいちに、上で述べたような「科学批判」、「科学は科学外の要因によってその考えが規定されているので、絶対ではない」という議論における「科学」と「科学外の要因」は、シンメトリーな関係にあることに注意しよう。つまり、じゅんすいに言い方としては、「科学が科学外の要因を規定している」とも言える。そして、もろもろの傍証を考えると、どうもこちらのほうの可能性のほうが、「科学外の要因が科学を規定」よりも、ありうるように思える。
つぎに、科学外の「パラダイム」(これまでの言い方を引きつげば、「科学外の思考様式の規定要因」)が「転換」することによって、科学に「革命」がもたらされる、つまり、科学が歩む「道のり」(あえて「発展」という価値判断を含んだ言い方は避けることにする)は連続ではなく不連続である、という、ある意味「科学の絶対性の相対化」の補題のような見方は、仔細に「科学の歩んだ道のり」を見れば瞭然なように、たしかに科学史上ドラスティックな転換点はあるにはあったが、それでも、おおかたに関してはむしろ「連続」の側面が主であり、いたづらに「不連続性」を「絶対化」する理由は、とくに見当たらない(たとえば、「古典力学/量子力学」という対を、あたかも排反的であるように扱い、「古典力学→量子力学」という「移り変わり」があったかのように語られたりするが、言うまでもなく、古典力学は量子力学の登場によって「廃棄」されたわけでもなんでもない)。
というわけで、それがどういう文脈においてであれ、「パラダイム」という言葉がクーンの名前をともなって出てくる書きものは、要注意です。
「パラダイム」についてですが、これも「テクスト」同様に、流石に学生のころから もうちいと簡単に表現できるだろうと思いました。「パラダイム」は「考え方(の枠組み)」、「テクスト」は「書きもの」で十分、分かるだろうと。
ポストモダンって、ほんと、なんか、新語というか言葉好きで、その言葉をさも有難そうに神棚に祭っているみたいで、今から思えば非常に滑稽ですね。上の、社会党のスローガンみたいに。
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