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前回末尾において、『プリンキピア』の命題函数、つまり、「〜ではない」であるとか「〜または〜」であるとかの表現は、もっぱらそれら「〜」に代入されうる命題の真理値のみにかかわり、と言われた。こうした命題函数の捉え方は「外延的」と呼ばれ、「内包的」と呼ばれるものに対立する。この項ではまず、「外延(的)」に対立すると言われた「内包(的)」とはいかなることなのか、そこからはじめよう。
さて、外延的な命題函数が上で言われたようなもの、つまりは「それの真理値は、それが含む命題変数の真理値にのみ依存するもの」であるが、この伝で言うと、内包的命題函数とは「その函数の真理値が、それが含む命題変数の真理値だけに排他的に依存しないもの」ということになる。これだけでは分かりにくかろうので、例を挙げる。
- F(p) 「Aはpを信じる」
容易に分かるとおり、人はある事柄(上の例で言うと、命題p)がたとえ間違っていようと(つまりは、偽であろうと)、依然その事柄を「信じる」ことができるし、ぎゃくに、いくらある事柄がそれ自体として正しかろうと(つまりは、真であろうと)、それを信じないことができる。だから、上に挙げた「Aはpを信じる」の真理値は、そこに現れる命題変数(「A」は命題変数ではないことに注意)によって排他的に専一に決されるのではなく、定項Aによって表される人が、変数pで表される事柄をじっさいに信じているとき、そしてそのときにのみ真となる。
こうした「内包的」と言われる命題函数に対して、以下の命題函数は外延的、つまりは(ここでの例で言えば)pやqなどの真理値のみによってそれらの値(そして、この値も真理値である)が決まる、と言われる。
- ∼p「pではない」
- p∨q「pまたはq」
- p•q「pかつq」
- p⊃q「pであればq」
- p≡q「pとqは同じこと」
例としてp∨qを取りあげると、この命題函数の値はここに現れる命題変数pあるいはqの真理値のうちどちらか(あるいは両方)がT(つまりは真)であるとき、そしてそのときにのみTとなるのであった。ここでの「そしてそのときにのみ」というのがあんがい重要で、この言明によって、「ある条件が満たされていたにしても、それ以外の条件によっては命題函数のとる値が変わりうる」という事態が回避されている。
そして、こうした外延的性質は、『プリンキピア』の対象である「数学」と密接に結びついている、つまり、数学は内包的な命題にではなく、外延的な命題に関わる理論である、と言われる。このこと、つまりは数学と外延性のかかわりは、クラスおよび関係の理論を扱うときに明らかになる。
本来であれば、ここから「外延的/内包的」という区別の震源たるフレーゲの「意義Sinn/意味Bedeutung」という区別まで「下りて」ゆき、そしてそこからカルナップおよびチャーチによる「外延/内包」の明示的区別を組み込んだ形式系を打ち立てる試みに「上がって」ゆく道すじを略述すべきなのだが、それは「略述」程度の粒度でおこなった場合ですら「エントリのなかでエントリを書く」という所行をなすことになってしまうので、とりあえずいまは以下に参照文献を挙げるにとどめる。「クラスと関係」のところで、この欠の幾許かは補いたい、と思う。
Frege, Gottlob. "Über Sinn und Bedeutung" in Zeitschrift für Philosophie und philosophische Kritik, vol. 100, 1892. Translated as "On Sinn and Bedeutung" in The Frege Reader.
Carnap, Rudolf. Meaning and Neccessity. Oxford: Blackwell, 1947.
Church, Alonzo. "The Need for Abstract Entities in Semantic Analysis" in American Academy of Arts and Sciences Proceedings, vol. 80, 1951. Available online.
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