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先日スカイプ上で行った「数学の哲学」講義に関する書誌を、参考のために挙げておく。あまりマニアックにならないよう、リーダビリティや入手可能性についてはいちおう気を配ったが、題材が題材だけに、そうした配慮にも限界があることを最初にお断りしておく。
■数学史に関して
有名で手に入りやすいものは
- E.T.ベル, 数学をつくった人びと, 早川書房
であろうが、いささか「読みもの風」でありすぎるので、以下のものをすすめる。
- フローリアン・カジョリ, 数学史, 津軽書房
- Florian Cajori, A History of Mathematics, Muschamps
フランス語ではあるが、以下のものが数学思想史としては白眉である。
- Leon Brunschvicg, Les étapes de la philosophie mathématique, Albert Blanchard
■「数学の哲学」一般に関して
定番だが、以下のものがやはりすぐれている。
- P. Benacerraf and H. Putnam (eds.), Philosophy of Mathematics, Cambridge
「数学の基礎」をめぐるシンポジウムで、カルナップ、ハイティング、そしてフォン=ノイマンが、それぞれ論理主義、直観主義、そして形式主義を代表して行なった講演録だけでも読んでおきたい。ちなみに、上記書のいくつかの論文は、以下に翻訳されている、はず。
- 飯田隆(編), 数学の哲学, 勁草書房
■集合論に関して
集合論に関する、哲学的およびテクニカルな取扱いの両方を含み、かつリーダビリティも高い本となると、以下になる。
- 田中一之(編), ゲーデルと20世紀の論理学第4巻, 東京大学出版会
集合論の基礎的なところから、最近の巨大基数論にいたるまでを手短に概観できる。また、戸田山和久のゲーデル論も必読。
「集合論の哲学」限定ということだと、個人的には以下をすすめる。
- Mary Tiles, Philosophy of Set Theory, Dover
歴史的なことに関しては、カナモリ氏の以下の論文が非常に参考になる。
- Akihiro Kanamori, The Mathematical Development Of Set Theory, ASL
■数理論理学に関して
何と言っても、フレーゲ『概念記法』、ゲーデル不完全性定理論文の翻訳を含む以下のアンソロジーが便利。
- Jean Van Heijenoort (ed.), From Frege to Gödel, Harvard
論理学史に関しては、以下の2冊が定番。
- W. Kneale and M. Kneale, The Development of Logic, Oxford
- Innocentius M. Bochenski, A History of Formal Logic, Chelsea
「論理学の哲学」に関しては、しょうじきこれと言った本が思いうかばないが、個人的な好みでパトナムの以下の本をすすめておく。
- ヒラリー・パトナム, 論理学の哲学, 法政大学出版局
簡潔に書かれた、よい本である。
■基礎論の諸流派(論理主義・直観主義・形式主義)に関して
これに関しては、手軽に読めるものは、少なくともおれの知る限り存在しない。ゆえに、「原典」をいちおう挙げておく。
- B. Russell and A.N. Whitehead, Principia Mathematica, Cambridge
- Arend Heyting, Intuitionism, Elsevier
- ヒルベルト&ベルナイス, 数学の基礎, シュプリンガー
■ゲーデルの、いわゆる「不完全性定理」に関して
いまではごく簡便に以下の文庫本が、「定理そのものについては原論文を読みゃいいだろ」というスタンスでbefore and afterを書き綴ることに徹し、それがゆえに非常に有益なものとなっている解説も付いていることだし、まずもって読むべきものである。
- クルト・ゲーデル, 不完全性定理, 岩波書店
参考書としては、上で挙げた『ゲーデルと20世紀の論理学』の不完全性定理を扱った巻がいいだろう。
- 田中一之(編), ゲーデルと20世紀の論理学第3巻, 東京大学出版会
ちなみに、この本には逆数学と2階算術についての論文も所収されている。
■数学の哲学の(それなりに)最前線に関して
まず、ネオフレーゲ主義に関しては
- B, Hale and C. Wright, The Reason's Proper Study, Oxford
有限主義(ヒルベルトのプログラム)に関しては
- Michael Detlefsen, Hilbert's Program, Kluwer
が基本書。唯名主義、自然主義、そして構造主義に関しては
- J.P. Burgess and G. Rosen, A Subject With No Object, Oxford
- Penelope Maddy, Naturalism in Mathematics, Oxford
- Stewert Shapiro, Philosophy of Mathematics, Oxford
をぞぞぞっと挙げておく。数学の適用可能性に関しては、以下を。
- Mark Steiner, The Applicability of Mathematics As a Philosophical Problem, Harvard
最後に、日本語で読める、「数学の基礎」をめぐる書物として、以下の2冊をすすめておく。
- 田中一之(編), 数学の基礎をめぐる論争, シュプリンガー
- M.ジャキント, 確かさを求めて, 培風館
いずれも、リーダビリティにすぐれた、よい本である。
数学という、とかく敬遠しがちな分野だけど、丁寧な流れの講義で興味深く聴講することが出来ました。身近な「数学」という意味ではデザインの中の「図形」というものに日々接しているのですが、このような人工的な創造物ではなく、自然界に見られるフラクタル構造に、なぜこのような現象が出現するのかが不思議。ロマネスコという野菜も実物をぜひ見てみたいです。今度、機会があればフラクタルについても何か書いてね。
フラクタルはじつはあんま詳しくない、というか、数学的にそれほどwell-definedな概念ではないので(「適度な複雑さ」ってなんじゃい!とか)、その直感的な理解可能性とはうらはらに、きちんと展開するとそれなりにめんどうだったりするんだけど、ただ、集合論が「色々な無限」があることを明かしたように、フラクタルについて語ることは「色々な次元」があることを(べつだんフラクタル幾何が「色々な次元」を見出したわけではないにせよ)説明する取っかかりになるかな、とも思うので、いつかやってみましょう。
で、ロマネスコ、あれちょっときもちわるくない?
マックレーンの専門は「圏論」かな?日本語で「圏論の基礎」という著書がありますね!
超準解析やハイパーセットにかんしては、ぼくも興味はあるのですが、この「講義」においては、ごく入門的なものにとどめざるを得なかったので、まったくふれることができませんでした。いつか、これらの話題についても何か書けたらな、と思うだけは思っています。
マクレーンの、Mathematical Intelligencer 上でなされた論争は、ちょうど Mathematics: Form and Function 執筆時とかさなっており、それもあって、「基礎の基礎」(ここで言う「基礎」は elementary の意ではなく foundation のそれと捉えてください)的なところにかんして思うところが多大にあったのでしょうね。ただ、Mathematics: Form and Function においては、それほど論争臭はただよっておらず、自分の考えをフラットに述べるにとどまっている感じです。
カナモリ氏の The Higher Infinite の続編については、ざんねんながら、何の情報もにぎっておりません。
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