遅ればせながら [趣味の数学]

岩波文庫版のゲーデル『不完全性定理』を入手したんですが、これはけっこういいですね。

まず、なにがいいって、訳者解説の手厚さ。全部で約310ページ中、「本文」（つまりはゲーデルの原論文）は訳注を含めても60ページちょいで、あとは（ほぼ）すべて訳者解説となっている。これだけだったら「量が多い」ということでしかないけど、内容的にも非常によく書けていて、これだけのために735円（税込）を払う価値はある、というものです。

解説は大きく分けて、導入部、歴史部、検証部の3つから構成されているのだけど、最後の検証部をのぞいて、ほとんど数式（論理式）は登場しないし、検証部にしたって、数式密度はきわめて低いのも、一般読者にはうれしいポイントなのではないかな。

内容的には「ゲーデル以前／以後」といった感じの趣になっていて、解説の肝となる歴史部で、不完全性定理に至るまで、そしてそれ以降の基礎論の流れが押さえられており、巷間で「不完全性定理云々」と言われるときに往々にして等閑に付されがちなアスペクトが手際よくまとめられている。

というわけで、おすすめです。